大隈重信の格言が重なった早大ラグビー 真冬の国立、エースFBが味わった55失点の屈辱
2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第26回は、ラグビーの早大FB河瀬諒介(4年)が登場する。今年1月の全国大学選手権決勝は28-55で天理大に敗戦。今季もエース格としてチームを牽引し、今日26日の準々決勝・明大戦から悔しさをぶつける戦いが幕を開ける。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
一人の記者が届ける「THE ANSWER」の新連載、第26回はラグビー・早大FB河瀬諒介
2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第26回は、ラグビーの早大FB河瀬諒介(4年)が登場する。今年1月の全国大学選手権決勝は28-55で天理大に敗戦。今季もエース格としてチームを牽引し、今日26日の準々決勝・明大戦から悔しさをぶつける戦いが幕を開ける。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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「諸君は必ず失敗する。成功があるかもしれませぬけど、成功より失敗が多い。失敗に落胆しなさるな。失敗に打ち勝たねばならぬ。たびたび失敗すると、そこで大切な経験を得る。この経験によって、もって成功を期さなければならぬのである」
早大の創設者、大隈重信の格言である。何十年も前に学生に贈った言葉。そんな姿が重なる選手がいる。
およそ11か月前の1月11日、国立競技場。最多16度の優勝を誇る王者・早大は、初優勝を狙う天理大を迎え撃った。接点で競り負け、ボール争奪で後手に回る展開。黒の軍団を止められない。28-55で迎えたラストプレー。当時3年のFB河瀬は自身が持ち込んだボールを奪われ、直後に蹴り出された。
連覇の夢がついえた瞬間、フィールドに突っ伏して泣いた。決勝最多55失点の屈辱。立ち上がれず、仲間に起こされた。「悔しいという言葉で収めていいのか。でも、悔しいとしか出てこない」。試合後の取材では、先輩たちが涙を流す情景を見た心境を問われても思い出せなかった。「負けて頭が真っ白になった。軽いパニックになってあまり覚えていない」
そんな中でも一つだけ脳裏に刻まれたシーンがあった。表彰式後、優勝チームの記念撮影。天理大メンバーがカップを掲げ、顔をくしゃくしゃにして笑っている。勝者をグラウンドから花道で送り出すため、すぐそばで待機していた敗者。4年のWTB古賀由教(現ブラックラムズ東京)が場内ビジョンを指さし、河瀬に向かって言った。
「これを見て悔しさを忘れんかったら、来年日本一になれるからな」