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“見える化”が選手の能力を伸ばす? 「データ」は野球をどう変えるのか(前編)

楽天でデータアナリストとしても活躍した神事努氏【写真:編集部】
楽天でデータアナリストとしても活躍した神事努氏【写真:編集部】

「データ」の2つの価値…「ファンを楽しませる」「選手の能力を伸ばす」

「一番はエンターテイメントとして、ファンがデータを見て選手の能力を評価するところ。データから選手の能力を予測したり、目に見えなかった能力を浮き彫りにしたりすることで面白さを生み出している。もう一つはプレーヤーの視点。選手がうまくなるためにどうしたらいいのか。ホームランを打つためにはバット速度が140キロ以上なきゃいけないなど、目標設定する中で数値が注目を浴びている。私たちもダイエットをしたかったら体脂肪率を測る。今まで体重だけだったものが体脂肪率も測ることによって、より深く体重コントロールにフォーカスできるようになった。野球のデータも、そんな進歩の仕方なんじゃないかと思います」

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「ファンを楽しませる」「選手の能力を伸ばす」。2つの面から価値が見い出されているという。なかでも、MLBで大きな役割を果たしているのはデータ分析システム「スタットキャスト」だ。15年から本格的に導入され、今や、すっかり定着。いったい、何ができるのか。

「テクノロジーの発達により、ボールのデータ、プレーヤーのデータなどを数値化できるようになった。投手でいうと、今まで分かっていたのはボールの速度だけ。それが、ボールの回転数、変化量など、いわゆる『ノビ』と『キレ』を数値化できるようになった。打者でいうと打球の速度、角度が出てくるので、パワーヒッターはどうして打てるのか。イチロー選手のように守備の間を落とす時はどの程度の打球速度だと外野の前、内野の後ろに行くのか。選手の足の速さはもちろん、一塁駆け抜けのトップスピードがどこで出るのかも分かるようになっています」

 すでにメジャー全球場で導入されているという「スタットキャスト」。では、野球がどう変わったのだろうか。

「野球の楽しみ方が多様になったことが挙げられます。今まで見えなかったことが見えてしまう。結果的に数値を使わざるを得ず、新しい指標がどんどん出てきている。打ち取るためにはどうしたらいいのか。今まで防御率ばかり言われていたのが、ボールの速さと変化量から打ち取る可能性が高くなるという数値が出てきた。わからないことが少なくなってきていると言えます」

 スタットキャストの登場により、変わりつつあるメジャーリーグ。翻って日本ではどうか。神事氏は「まだスタッツの段階。打席数、ヒット数、ホームラン数……。取れるデータは何十年も変わってないと思います」と指摘した。

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神事 努

国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授。1979年生まれ。バイオメカニクスを専攻し、中京大学大学院で博士号を取得。2007年から国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツ科学研究部研究員。14年から3シーズン、東北楽天ゴールデンイーグルスでデータアナリストを務めた。現在は「ネクストベース」のエグゼクティブフェロー(主任研究員)も務め、同社で野球のデータ分析サイト「Baseball Geeks」を展開。スタットキャストの機能のわかりやすい解説なども行っている。

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