無敵だった短距離女王・福島千里 惹き込まれた、決して五輪を諦めない32歳の「必死」
ぶらさなかった練習哲学「常に新しいことを」
ほんの数ミリのズレが、100メートル先で大きな差を生む短距離。日々、体も変化していく。少し天然っぽさもあるキャラクターの反面、芯の通った練習哲学はぶらさない。繊細な世界で生きてきたスプリンターが持つ独特の世界観に惹き込まれた。
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「常に進化する。プラトー(停滞状態)になるトレーニングは一つもなくて、これができたら常に新しいことをやる。今までやったことを積み重ねつつ、また新しいエッセンスを入れていかないと続きもしないし、進化もしない。新しいことをやることは、今までずっとやってきた。
もちろん、新しいことはすぐにできるわけではないし、常にできないことをできるようにするのが練習だと思う。できることばかりを積み重ねるのが練習ではない。常に何かをできるように、現状に満足せず毎日やってきた」
日本No.1を決める大会は、12秒01(追い風0.8メートル)の組5着で予選落ち。常に先頭を走ったかつての女王は1レースで大会を去り、東京五輪への挑戦は幕を閉じた。
直後に33歳になった。願わくは、努力がもう一度花開くところを見たいファンもいるだろう。あとに続こうとする若手も多い。必死に駆け抜け、日本短距離界に確かな功績を残したスプリンター。引き際なんて人それぞれ。目標に向けていつまでも歯を食いしばる姿に意義深さを感じた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)