井上尚弥、凱旋V6の裏側 相手陣営から抗原検査結果のLINE、大橋会長の涙ぐましい苦労
毎朝、相手陣営から届く抗原検査結果の知らせに「ドキッとする」
来日後も心が休まる時間はなかった。ディパエンには練習できる隔離施設を用意したほか、井上と同じく毎日の抗原検査を徹底。関係者を通じて相手陣営から毎朝LINEで報告が届いた。「毎朝ドキッとする。もし何かあれば電話だから少し安心しているけど、大した用事じゃないのに電話の時がある。何事かと思ってしまう」。最も心臓を締め付けられたのは、試合2日前の12日だった。
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ディパエンの隔離が明け、選手と陣営全員にPCR検査が義務付けられていた。結果は全て陰性。「あまりに(運を)持っているから何かオチがあるのかと思っていた。最近では一番血圧が上がったね」。プロモーターは試合を組み、選手をリングに上げるまでが仕事。「あとは地震だけ。最近多いから……」。祈るように決戦当日を迎えた。
リングに上げてしまえば、世界最強の愛弟子が猛威を奮う。8回までかかったものの、勝つのが当然かのように防衛数を重ねた。コロナ対策、観客制限の調整、各所との打ち合わせ。大橋会長は充実した表情で道のりを振り返った。
「プロモーターとして今回が一番思い出になる。2年ぶりの世界戦開催ですし、ここまで心配した経験はなかった」
かつてはストレス過多で興行直前に痛風を発症したこともある。井上が輝きを放つ裏には、プロモーターの涙ぐましい苦労があった。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)