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異色の“闘うドクター”と呼ばれた男の今 格闘家&医師の二足の草鞋を実現できた理由

格闘家と医師を目指していた大学時代、周囲からは1つに絞るよう勧められたこともあったという
格闘家と医師を目指していた大学時代、周囲からは1つに絞るよう勧められたこともあったという

周囲からは片方に専念すべきの声も「自分にしか出せない価値がある」

――プロとして活動していた2007年に医師免許を取得、その後は内科医となり“闘うドクター”としても注目されました。現在は産業医として勤務されていますが、これまでの人生で最も印象に残る挫折経験はなんですか。

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「基本ずっと挫折していたというか……落ちこぼれなので、何年かに一度の成功体験でリカバリーして生きてきたのが実際のところです。やっぱり2つのことをしてバランスをとっているのは事実ですが、試合の準備が十分にできなかったこともありましたし、仕事や人間関係が疎かになって周りに嫌な思いをさせてしまうこともあったので、その瞬間は罪悪感というのが強くありました。30代半ば頃はしっくりこず、初めて『この生き方でいいんだっけな』と思っていた時期が何年かありました」

――その思いはどうやって解消されたのでしょうか。

「自分の覚悟の問題だと思ったのと、当時の恩師には『医者なんだから24時間、365日医者であれ』と言われて、そりゃそうだと思いました。もちろん一日中ずっと働くことはできないけれど、いつでも医者らしく『人に優しくしよう』『世のため人のためになろう』と真摯にやっていないとダメだと。それありきでの自分のプライベートだったり、欲求だったりするのかなと。

 その言葉で姿勢を正すことを気付かされましたね。もうちょっと働けとか、好きなことやっている場合じゃないだろと言われるケースもあるのでしょうけど、僕も1人の人間としても生きているので、プライベートはプライベートで楽しみつつ、基本的には『いつでも医者らしく生きていこう』と思ってから、なんとなく生きやすくなったというか、自分らしい生き方を見つけられました」

――周囲から「どちらかに集中した方がいい」「1つに絞れ」などと言われたことはありましたか?

「2007年に『R.I.S.E.』のDEAD OR ALIVE TOURNAMENTで準優勝したのですが、この直後に国家試験が控えていて、まさに同じタイミングになってしまってかなり危なかったです。スポンサーさんから『格闘技に専念するなら』と声をかけていただいたケースも沢山ありますし、医療関係者からは当然『医師業務に集中したら?』と言われたこともあります。

 でも、2つやっていたから今の自分があると思いますし、2つやっている自分にしか出せない価値があると考えています。もちろんそのせいで完璧にできず迷惑かけたケースもあったと思いますが、今となってはそこにこだわったおかげでいろいろなことがあると思います。

 僕の場合はたまたまどちらも仕事みたいになっていますが、いわゆるライフワークバランスは産業医としても啓蒙しているところ。双方の充実がシナジー(相乗効果)を生んで、自分自身の人生をよくしているし、世間的にも2つの専門分野を持っていることで注目してもらえるケースがあるのでやって良かったと思うし、できるのであれば皆さんにもお勧めしたい」

(後編に続く)

■池井佑丞(いけい・ゆうすけ)

1980年12月31日生まれ、宮崎県出身。家業が病院ということもあり医師に憧れを抱くも、鹿児島・志學館高卒業時には偏差値が40しかなかった。1年間の浪人の末に杏林大医学部に進学。2年時に格闘技に出会い、06年プロデビュー。07年の「R.I.S.E.」 DEAD OR ALIVE TOURNAMENTで準優勝。同年の医師国家試験に合格したこともあり“闘うドクター”として注目された。戦績は12戦7勝(5KO)5敗。選手でありながらも内科医として勤めていたが、15年から産業医に。現在は日立グループ企業の統括産業医を務めながら、起業した株式会社リバランス代表として様々なサービスを提供。トレーナー、セカンドキャリアサポートなど事業を手広く手掛けている。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

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