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中国が見逃している「サッカーの本質」 エリート選手に欠落する“重要な資質”とは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は数多くのタレントを育てたアルゼンチン名将の言葉から、サッカーでは「集団が個人よりも優位」という真理に注目。バルサにあって中国にないものとは――。

17日、W杯予選でオーストラリアと対戦したサッカー中国代表【写真:Getty Images】
17日、W杯予選でオーストラリアと対戦したサッカー中国代表【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:ペケルマンが指摘、プロ選手として必要な5つの資質

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は数多くのタレントを育てたアルゼンチン名将の言葉から、サッカーでは「集団が個人よりも優位」という真理に注目。バルサにあって中国にないものとは――。

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「プロサッカー選手として大事な資質を5つ、挙げるとすれば何か?」

 アルゼンチン代表、コロンビア代表をワールドカップ(W杯)で率いたホセ・ペケルマンは、その問いに答えている。育成における名伯楽の言葉は、傾聴に値するだろう。

「1つ目は、まず技術だろう。2つ目は体力。3つ目は精神的な強さで、それによって全力を出せる。4つ目がプレーすることへの使命感。いつでもプレーにフォーカスし、例えば審判と口論したり、相手選手ともめたり、気持ちを乱されず、プレーに集中できるか。5つ目がとても重要で、『サッカーは集団が個人よりも優位』と理解しているかどうか、だ」

 当然のことだが、サッカーは11人対11人の集団戦である。お互いが助け合えるか。連携することによってプレースピードは上がるし、効率的に守ることもできる。たった1人でできることには限りがある。

 ペケルマンの言葉は、サッカーの真理だ。

 例えば中国サッカー界はここ数年、強化に力を入れてきた。莫大な資金を投じ、海外に留学させたり、有名コーチを招聘したり、エリート教育を注入。中でも個人に対する鍛錬は格別で、運動能力は数値化できるだけにそこへ特化したトレーニングを行ってきた。結果、特殊任務の兵士のような運動能力と体格の選手が多くなった。

 しかし国際的に通じる選手は今もほとんど育たず、中国代表も弱小の域を出ないままだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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