息切れすら躊躇した4日間 初めての女子ゴルフ取材で感じた「自分は大丈夫」の怖さ
選手との距離が近いのは“マナーの順守”大前提のもと
着信音が結果に直接結びついたかどうかは分からない。ただ、1センチの差でも明暗が分かれてしまうスポーツということを、見守る側も肝に銘じておかなければならないと感じた瞬間だった。
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今大会、渋野選手は12位タイで145万円を獲得しているが、仮にこれがパーであれば9位タイ、賞金は205万円だった。各ランキングで来季のシード権も決まるし、一打一打に重みがある。もし自分のせいで1打損し、優勝を逃すなんてことがあったら……想像するだけでゾッとした。
観客の多いスタートホールでは、携帯電話は電源を切るかマナーモードにするよう再三アナウンスされていたし、各組についている係員、キャディーも会話、歩行などを止めるよう常に促していた。それでも撮影を注意される人もおり、スタートホールでは選手が現れる前ではあったものの、コース脇からアラーム音が鳴ったこともあった。
ツアー側で出来ることは十分やっているように感じる。ここまでくると、各々の意識の問題だろう。「自分は大丈夫」「ちょっとくらい良いだろう」という軽い気持ちが、選手の生活を変えてしまう恐ろしさを秘めていることを、強く心に刻んだ。
ゴルフファンには当然のことかもしれないが、もう一つ驚いたことがある。それは選手とギャラリーの動線がほぼ同じということだ。ホール間の移動時などでは特に距離が近く、人気ゴルファーの表情や動きを間近に見られる。
野球ならスタンドから近づくことはできないし、選手がベンチに戻れば何をしているかわかりづらい。一方、ゴルフは18ホールずっと近くで選手を観戦できる。個人的には「これは凄い」と思ったし、変わらないでほしい特長だと感じた。会見で複数の選手から話を聞いたが、どの人にもそれぞれの魅力があり、人気を集めていることも頷けた。
こうした魅力を近くで感じられるのも、周りで見守る私たちのマナーが守られているという大前提があってこそ。口酸っぱく言われていた遵守の重要性に、本当の意味で触れられた4日間だった。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)