ラグビー日本代表、苦戦に見えた光明 デビュー戦初トライの24歳中野将伍が示した可能性
“失われた2年”を今後2年で取り戻せるか
試合後の会見で、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は「2年間で最初の勝利になったが、自分たちはまだ(2年で)5試合しかしていない。試合数が少ないし、新しい選手も入ってきている」と語っている。最近の会見では、このような試合数の少なさに触れる回数が多いのだが、2年後の成功のためには、深刻かつ重要な課題なのは明らかだ。代表強化というフィールドでは、これまでのコロナ禍は過去のものではない。この2年の空白を、これからどのようなアイデアで取り戻すことができるかという、明日からの宿題だ。
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しかも、この宿題はチームだけに任されるものではないはずだ。通常と同じ段取りでこれからの代表戦を組んでいけば、日本代表が次回W杯までにできるのは単純計算で残り13試合前後だ。統括団体ワールドラグビーが各国の代表戦をオーガナイズする傾向を強める現状では、簡単に“例外“のマッチメークは難しい。エキストラのゲームを組むためには、協会サイドが表裏でどのようなプランを対戦可能な相手に提示できるかが重要なチャレンジになる。
藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが協会に求める、正代表とは別の代表予備軍による強化も、選手層の厚みを増すには重要な課題になる。代表強化は、1人の指揮官に投げっぱなしでは成功できない時代になっていることは、協会上層部なら誰でも認識しているはずなのだが、果たして“失われた2年”をこれからの2年で取り戻せることができるのだろうか。プランではなく、協会側の実行力が問われている。
準備不足という時間との戦いは、先に触れたデータからでも窺えるように、日本のラグビースタイルにも影響している。ポルトガル戦では、前半はハイパントを多用したこれまでの戦術を継続している。だが、これも従来通りで、蹴ったハイボールに効果的なプレッシャーをかけられない場面が多く、ポルトガルにボールを安定供給している状態が続いた。ポルトガルの初トライも、日本のハイパントからのカウンター→PKからの速攻で奪われている。
後半に入ると、ランとパスで仕掛ける攻撃に切り替えたが、前半の21-11から17-14と肉薄されたスコアが回答だ。ポゼッション、テリトリーも、共に後半の数値が3、4割低下している。後半インジュアリータイム(ロスタイム)まで、1トライ1ゴールでゲームがひっくり返るような展開は、世界トップ4入りに挑むチームとしては寂しい内容だった。戦術面でも“生みの苦しみ”は継続中と考えていいだろう。