ラグビー日本代表、苦戦に見えた光明 デビュー戦初トライの24歳中野将伍が示した可能性
存在感を高める20代前半の“ポスト2019世代”
早稲田大の最終学年で大学日本一を勝ち取ると、そのままサンウルブズに招集されて2020年スーパーラグビーに参戦。南半球強豪国の代表選手が集まるリーグでは、デビュー2戦目で初トライを奪いポテンシャルを証明してみせた。その後入団したサントリー(現・東京SG)でもトップリーグ開幕戦でデビュートライを決めて、プレーで見せる男を証明すると、日本代表でもいきなりインゴールをこじ開けた。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
現在の身長は186センチ、体重100キロと、日本代表BKの中でもボリューム感溢れるサイズを誇る。東筑高時代から変わらないフィジカルの強さが大きな武器だが、早稲田大時代には、そのサイズと強さを生かして、オフロードパスにも磨きをかけた。縦系のパワフルなランナーというイメージが強いが、重心の僅かな移動で相手防御の間隙を突く鋭いランなど、細かいスキルも磨いてきた。
ポルトガル戦の前半40分に生まれたデビュートライも、内側に切れ込む絶妙のアングルで走り込んでのラインブレークからのものだった。イエローカード2枚を含むチームの反則の多さに厳しい表情を浮かべたジョセフHCも、自らが代表に引き上げた中野のプレーには「ショウゴ(中野)に関しては、限られた時間の中で、チャンスを作ってトライを決めて、ラインブレークやオフロードパスもしっかりしてくれた」と表情を緩めた。
先にも触れた前回W杯の躍進を経験しない選手が先発の半数を占めたポルトガル戦では、中野と共に新たな力が苦闘の中で、そのポテンシャルを垣間見せた。今夏のデビューから5戦連続フル出場を続ける22歳のWTBシオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)は、その中野がチップキックを好捕してからのオフロードパスを起点にチームのファーストトライをマーク。2戦連続で先発を張る24歳のWTBディラン・ライリー(埼玉)は、この日はハイボールの競り合いやBK最多のタックル数(8回)などフィジカルバトルで存在感を発揮。24歳の中野とともに、20代前半の“ポスト2019世代”が、その存在感を見せ始めている。
中野が「外側でゲインした後のオフロードパスの精度だったり、ボールキープやボールを継続するところの細かい部分は今後修正していかないといけない」と語るように、新しい布陣によるパス、連係ミスを随所に露呈しながらの2年ぶりのテストマッチ勝利。2年間の空白を取り戻す挑戦と新たな戦力への投資を続けるなかで、リターンを手にする転換点はいつか。残された時間は2年を切った。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)