「日本代表のラグビーは面白い」 稲垣啓太が力説、23年フランスW杯4強への新たな挑戦
興味深かった稲垣の言葉「チームのスタンダードが高くなったことを実感」
不動のリーダーの交代というインパクトに隠れてしまいがちだが、秋の強化をスタートさせる中で、代表チームの注目すべき新たな取り組み、目指すものも明かされている。
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ジョセフHCと同日に、リーチに代わり急遽会見に応じたPR稲垣啓太(パナソニック)は、これからチームが作り上げるものを「独自のスタンダード」と指摘している。メディアに“笑わない男“と取り上げられ、一見取っ付き難そうなワイルド風PRだが、元来の話好き、理屈っぽい議論も大好きな稲垣の言葉は興味深い。
「宮崎合宿の出だしは、非常にいい印象を受けました。チームのスタンダードが高くなったことを、今日(10月2日)一日の練習で実感しました。その理由は、初日にしては皆ゲームへの理解度が高かったし、相当準備してきた感覚があった。なので、いいスタートを切れたと思います。ミーティングでも、一番大きな話題がそのスタンダードについてでした。我々独自のスタンダードを作り上げることが大切ですし、ティア1チームに対してのスタンダードが一体どういうものなのか、ということです」
ティア1と呼ばれるW杯ベスト8クラスの強豪国に対して、日本代表のボール保持率、エリア確保率、相手防御突破などのデータは、19年W杯、そして2戦全敗に終わった今夏の欧州遠征でも大きな差はなかった。ランプレー、タックルなどでも異彩を放つPR稲垣の日本代表観が、このチームの強みと現在のスタンダードを的確に物語っている。
「日本代表のラグビーって世界的に見ても面白いと思います。なぜかというと、得点能力は世界的に見ても高いほうだからです。データ上で見ても、ボールタッチの回数も、パス回数も世界で一番多い。だから、ボールが動く。それを見て、日本代表のラグビーを真似したいと思ってもらったら、ファンにとっても我々にとっても素晴らしいことです」
しかし、同時に稲垣は「我々のスタンダードは、データ上はほとんど同じだったのに(夏の遠征で)ティア1(クラス)に勝てなかった。だからこそ、独自のスタンダードを作り上げようというのがミーティングの話でした」とも指摘する。
では、独自のスタンダードとは何か。稲垣に続いて取材に応じたジョセフHCが「相手もいるので(外部と)共有できないのだが」と苦笑しながら補完する。
「我々はボールインプレー(試合中にボールを保持し、プレーできた時間)に関して、日本はティア1チームよりも長い時間持てている。ボールをしっかり自分たちで保持することができると、試合もしっかり勝つことができる。これは、自分たちにはフィットネスがあるからだ。W杯日本大会の時点で、我々は基本的に36~38分くらいのボールインプレーで試合をしていたが、他のチームは32分くらい。しかし、現在はティア1で平均38分くらいになっている。なので、前回のW杯でのプレー時間では十分ではない。もっと高めていく必要があると思っている」
前回W杯でも強豪相手にも見せたボールインプレー時間での優位性を、23年にも強みとして発揮したいのは当然のことだ。そのために欠かせない要素となるのが、これまでも日本代表が目指し、取り組んできた世界トップクラスのフィットネスや持久力、そしてスピードなどの強化だ。今回の合宿は、当初予定されていた9月中旬のスタートが後ろ倒しになってしまったが、その遅れを挽回するために、ジョセフHCは合宿前の選手個々にフィットネス、ストレングスメニューを渡している。短縮された合宿を補う、事前の宿題のようなものだが、その提示された目標数値を、選手のほぼ全員がクリアして合宿に集まったという。
この目標に据えられた数値というのは、2019年大会のティア1チームの平均値。つまり2021年9月の時点で、日本代表候補たちは2年前の列強と同じ数値を身につけて合宿をスタートしたことを意味している。この数値をスタートラインに、これからの2年で日本独自のスタンダードを築いていくことになる。