「日本代表のラグビーは面白い」 稲垣啓太が力説、23年フランスW杯4強への新たな挑戦
2年後のW杯へ、ジョセフHCは世代交代も見据える
同時に、リーチがプレーするFW第3列でも地殻変動が起きている。若手だった姫野和樹(トヨタ)が今年はスーパーラグビーに挑んで、ハイランダーズ(ニュージーランド)で主力メンバーとして活躍するなど成長。ベン・ガンター、LO兼務のジャック・コーネルセン(ともにパナソニック)ら新たな力が代表にも集まっている。
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合宿前にリーチが「試合に出ないキャプテンは存在するが、チームには良くない。(キャプテンは)他の選手から、一番出るべきだと思われないといけない」と語ったように、常時ピッチに立ってチームを引っ張ることもキャプテンの仕事だとすれば、その役割を最も果たせる位置に立つのがラブスカフニだというのが首脳陣の判断だった。ジョセフHCが「年齢が上がってきた選手もいる。彼らをしっかりと評価して、2年後にどうなっているのかを含めて評価していかないといけない。そういう理由もあるので、若い選手もしっかりメンバーに入れている」と語るように、2年後へ向けた世代交代も見据えている。
ジョセフHCが指名したこの新リーダーも、温厚な人間性、ラグビープレーヤーとしての資質と、リーチに匹敵する人材なのは間違いない。ブレークダウンでのジャッカル、そしてタックルと、長い手足を生かして相手とボールに絡みつくようなプレーは、同じオープンサイドFLで世界にインパクトを残したリッチー・マコウ(ニュージーランド)、パナソニックでもプレーしたデイビッド・ポーコック(オーストラリア)という世界のレジェンド選手にも匹敵する。
ラブスカフニは、キャプテン就任に「本当に名誉で光栄な気持ちです。このチームは特別なチームです。 私とここにいる仲間たちの心の中は、桜のジャージーを着て自分たちのベストを出し、日本を代表することに向け、熱い気持ちでいっぱいです。家族や友人、最終的には日本の皆様に誇りに思っていただけるように頑張りたい」とコメントを発表している。寡黙ながら、君が代の歌詞を独自に学ぶなど日本文化を理解し、日本でプレーすることをこよなく愛し、楽しんでいる。指揮官は「今はこの秋のツアーだけでと考えている。その後で再評価をしていきたい」としているが、2019年W杯で主将代行を任せるなど、ラブスカフニへの信頼は篤い。秋の4試合で本人、チームに支障がなければ、そのまま23年へ舵取りを託す可能性は高いはずだ。
南アフリカ・プレトリア出身のラブスカフニに、多感な高校時代から日本で育ったリーチと同じような感性を持つことは求められない。だが、リーチが率いた2015年、19年大会と比べると、代表コアメンバーのリーダーシップ、成熟が進んでいるのは間違いない。良い意味で“大人の判断“ができるようになってきたチームを1つにまとめ上げるのは、過去2大会へ向けた作業ほどには1人のキャプテンに依存しない組織に成長している。どんな時も心は乱さず、プレーは熱く激しい新キャプテンの下で、前回大会以上に成熟した桜の戦士たちが“2019年超え”に挑むことになる。