米国の大学スポーツの闇 名門校で起きた「替え玉受験と賄賂」不正入学のからくりとは
選手ではなくお金だけがコーチの手元に残る不正入学のからくり
では、そのからくりを見てみよう。
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シンガーは、もともと高校のバスケットボールのコーチをしており、高校生選手を大学に推薦して、送り込む方法を知っており、これを悪用したのだ。
悪事がバレてはいけない。アメリカンフットボール部や男子バスケットボール部のようなテレビ中継があり、常にマスコミで取り上げられる花形種目は避けた。そして、マスコミからの注目は低いが、多くの選手を登録する種目に目をつけた。大学の水球部、ボート部、テニス部などであったようだ。
不正入学した子どもたちはこれらの競技種目の経験は全くないが、運動部のコーチに賄賂を渡し、リクルート選手枠を割り当ててもらうことで入学を確実にする。
米国の大学運動部には「ウォーク・オン」という言葉がある。これは、入学にあたって大学運動部からリクルートされず、奨学金の授与を受けていない学生選手のことを指す。この不正事件では、高校生を運動部に必要な生徒としてリクルートするが、奨学金は与えないという説明をしてリクルート枠を割り当てていたようだ。
コーチは大学の入学者を選考する担当者に、リクルート枠の生徒についての書類を提出し、合格を確実なものにするよう操作した。このスキャンダルでは、運動部と入学者選考の担当者をつなぐ大学の職員も罪を犯した。
書類には学校での成績、学力試験の点数に、運動部選手としての結果などが記載されている。ドキュメント映画の「オペレーション・バーシティー・ブルース」では、優秀な選手と偽るために競技の写真を合成するシーンを映し出し、不正の手法を象徴的に描いている。
不正入学した生徒はその競技の経験はないのだから、入学しても運動部には入部しない。選手ではなく、お金だけがコーチの手元に残る。