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米国の大学スポーツの闇 名門校で起きた「替え玉受験と賄賂」不正入学のからくりとは

選手ではなくお金だけがコーチの手元に残る不正入学のからくり

 では、そのからくりを見てみよう。

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 シンガーは、もともと高校のバスケットボールのコーチをしており、高校生選手を大学に推薦して、送り込む方法を知っており、これを悪用したのだ。

 悪事がバレてはいけない。アメリカンフットボール部や男子バスケットボール部のようなテレビ中継があり、常にマスコミで取り上げられる花形種目は避けた。そして、マスコミからの注目は低いが、多くの選手を登録する種目に目をつけた。大学の水球部、ボート部、テニス部などであったようだ。

 不正入学した子どもたちはこれらの競技種目の経験は全くないが、運動部のコーチに賄賂を渡し、リクルート選手枠を割り当ててもらうことで入学を確実にする。

 米国の大学運動部には「ウォーク・オン」という言葉がある。これは、入学にあたって大学運動部からリクルートされず、奨学金の授与を受けていない学生選手のことを指す。この不正事件では、高校生を運動部に必要な生徒としてリクルートするが、奨学金は与えないという説明をしてリクルート枠を割り当てていたようだ。

 コーチは大学の入学者を選考する担当者に、リクルート枠の生徒についての書類を提出し、合格を確実なものにするよう操作した。このスキャンダルでは、運動部と入学者選考の担当者をつなぐ大学の職員も罪を犯した。
 
 書類には学校での成績、学力試験の点数に、運動部選手としての結果などが記載されている。ドキュメント映画の「オペレーション・バーシティー・ブルース」では、優秀な選手と偽るために競技の写真を合成するシーンを映し出し、不正の手法を象徴的に描いている。

 不正入学した生徒はその競技の経験はないのだから、入学しても運動部には入部しない。選手ではなく、お金だけがコーチの手元に残る。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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