21歳で初めて来た生理 元日本代表・岡部紗季子が語る「体操選手と思春期」の闘い
「胸が出てくるのも嫌。女性よりもアスリートとしていい方を選ぶのが普通でした」
それは、体操選手が持っている独特の「感覚」が理由にあったという。
「試合で来たら同じ状況になる。生理に限らず、体調が悪い時、故障がある時も常にベストでできるようにしておかないといけないので、それもトレーニングという考え方。『感覚』が大事な競技なので、前回うまくいったからと同じようにやってもうまくいかない。その日その日のコンディションに感覚を合わせることが大事になるんです」
生理不順も経験しながら、全うした現役生活。競技によっては思春期の悩みを選手同士で共有することもあるが、岡部さんの周囲ではそういう環境になかった。
「まず、生理が来る年代が人それぞれ差がありすぎたこと。あとは恥ずかしさがあって、悩みを共有する空気じゃなかった。『みんな来てないのに私だけ……。女性になっちゃった』という感じ。そういう部分も含め、精神年齢が若いスポーツならではと思いました」
少しでもうまくなりたい、強くなりたい――。高い目標を持つからこそ、普通の10代が持つような、女の子らしく見られたいという願望もなかった。
「髪形もポニーテールで、唯一、レオタードはかわいいのを着たいくらい。胸が出てくるのも嫌。走って揺れるのも、本来の競技とは違う、女性的な見られ方をされるのも嫌。“女性として”よりも“アスリートとして”いい方を選ぶのが普通でした」
なぜ、自分に生理が来ないのかについては「ただ、成長が遅いだけかな」と気に留めることはなかった。女性コーチを含め、指導者から助言を受けることもなかったという。