震災から10年目の春 大船渡の子供へ、伊藤華英が半年間をかけて伝えたこと
子どもたちに贈った言葉「大切なことは昨日より今日の自分」
成果発表の後はトークコーナーを実施し、伊藤さんの現役時代のエピソードが披露された。参加者と同じ小学生時代、どのくらい練習していたかとの質問には「1年生の時に選手コースに入って週2回くらいの練習。2、3年生になると毎日練習していました」と話すと、小学生たちは驚きの表情を浮かべた。さらに2度出場した五輪の思い出を問われると、こんなことを語った。
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「五輪は特別な場所。なかなか普段は感じられないけど、海外に行くと自分は日本人なんだ、日本や自分たちの街は素晴らしい場所なんだということも確認できます。また、一生懸命やっていれば、一生懸命やっている仲間と出会います。五輪はいろんな国の選手がみんな頑張っている場所だったので、もっともっと私も頑張ろうという謙虚な気持ちになれました」
水泳を続けてきて良かったことの質問については「一生懸命、努力することが大切と学びました」と伊藤さん。「一緒に頑張るライバル、仲間がいて、1番になる人も2、3番になる人も生まれる。みんながいることで、それぞれの価値が高まる」「結果は神様しか知らない。だから、自分にできるのはベストを尽くすことだけ。それは人生も同じことだと思いました」と答え、水泳で得た気づきを伝えた。
オリンピック選手と小学生が交流を図る貴重な1時間半は、あっという間に過ぎた。最後に伊藤さんは子供たちに心を込めた言葉を贈った。
「大船渡や東北になかなか行けずに寂しい思いをしていますが、みんなと月に1回、動画を通じて会うのは意義があること。(コロナ禍の)去年から今年、特に感じました。一人一人成長することがスマートコーチのシステムならできます。人と比べて自信を失うこともあるかもしれないけど、大切なことは昨日より今日の自分。その成長を感じることが水泳はできるし、一生懸命やって身につけた自信を水泳以外にも生かしてほしいと思います」
2011年の東日本大震災から、ちょうど10年目の春。オンラインを通して深まった絆は、距離を越え、これからもつながっていく。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)