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ラグビー選手・川西智治が難病を告白 人知れず10年続ける「潰瘍性大腸炎」との闘い

「同じ病気を持つ患者さんを少しでも勇気づけられれば」と川西は語った【写真:本人提供】
「同じ病気を持つ患者さんを少しでも勇気づけられれば」と川西は語った【写真:本人提供】

体が武器のラグビー選手が絶食入院で17キロ減「自分が自分ではないようでした」

 怪我から回復し、夢にまで見たジョギングまでこぎ着けたのに、2日後には緊急入院。頭の中が真っ白になりましたが、当時チームメートだった菊谷崇さんご夫婦の励ましもあり、治療に専念しました。2週間の絶食を経て退院する頃には、体重は17キロ減。鏡に映る人は筋肉がすっかり落ち、自分ではないようでした。

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 入院中に心の整理をつけ、また頑張ってレギュラーを獲ろうと決意。僕の変わりようにみんな驚いていましたが、少しずつできる練習やトレーニングが増えるのが本当にうれしかったです。退院時にもらった資料を参考に、食べ物にも気を遣うようになりました。刺激物やアルコール、糖質、脂質を控える食事で、米、納豆、豆腐、バナナ、茹で野菜や鶏肉などが主。うどんも消化がいいので、この頃は練習場近くにある「一心亭」といううどん屋さんに毎日通っていました。僕の細かなオーダーにも対応してくださり、感謝しています。

 落ち着いた頃、千葉の実家に戻り、病気や入院の経緯を報告すると、なんと母親も同じ病気を持っていることが分かったのです。母はショックを受けたようですが「治る病気ではないけど、うまく付き合っていけばいい」とアドバイスをくれました。でも、僕は「絶対に治す、治る」と意地を張りましたが、食事制限を厳しく守っても症状は変わらず。気分転換に出掛けた旅行先で、主治医の勧めもあって食事制限を緩めると、逆に症状が緩和されたり。気まぐれな病気に振り回されっぱなしです。

 ラグビーでも状態が上がって試合に出られたかと思えば、まったく体が動かない時もありました。新しく強い免疫抑制剤を使った時には、副作用なのか、自慢の持久力が落ちてしまい、コーチから「ちゃんと練習をしているのか」と厳しい言葉をもらったこともあります。怪我が増え、パフォーマンスも上がらず、この時の僕はチームからの信頼を落としていたと思います。そして、シーズン終了後、2度目の絶食入院をしました。

 この時、姉と一緒に見舞いに来てくれた母は意外にも明るく、「うまく病気と付き合っていきなさい。何でも“過ぎない”ように普通に生活すればいいの」と言いました。以前の僕は聞く耳を持ちませんでしたが、厳しい食事制限の効果がなかった経験から、この時は母のアドバイスに従ってみることにしました。以来、制限なく普通に食事を摂り、お酒を飲むこともあります。調子が悪くなってきたら無理はせず、どうしようもなくなったら副腎皮質ステロイド薬を飲めばいい。この気持ちの切り替えが良かったようです。

 また同じ頃、主治医の先生に紹介してもらい、千葉県にある東邦大学医療センター佐倉病院の鈴木康夫先生にセカンドオピニオンを伺いました。鈴木先生は潰瘍性大腸炎の治療における第一人者で、偶然にもラグビーをこよなく愛する方でした。今でもラグビーを続けながら行える治療について、いろいろとアドバイスをいただいています。

 いろいろな方のサポートを受けながら、ここ3年くらい病状は落ち着いていましたが、昨年は免疫抑制剤の副作用でアキレス腱断裂の傷口から感染症に。通常より1か月ほど長く入院治療したことで回復しましたが、今年6月には潰瘍性大腸炎の状態が悪化。新しい薬に切り替えて効果のほどをはかるなど、まだまだ病気との闘いは続いています。

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