「なぜゴルフ選手はイップスになるのか」 “心の病”と闘い続けた北田瑠衣の経験談
指導者に求められることとは「精神安定剤的な優しい言葉もほしいけど…」
症状を軽減させるのには苦労した。厄介だったのは「練習ではうまくいく」ということだ。選手は練習でトライ&エラーを繰り返し、試合に向けて調整していくもの。しかし、本番になると理由もなく崩れてしまう。
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「おそらくイップスはそういうものだと思います。練習ではうまくいくけど、いざ試合でより集中している時に限って変なものが出てくる。だから、練習して練習してイップスが治るかというと、治らないんですよ」
完治したと言い切れる人もいるかもしれないが、努力しても治すのは難しい。アスリートが多くの壁を乗り越えてきた「努力」という方法が通用しない。では、もしもイップスになったらどうすればいいのか。受け入れがたい事実に直面した時に大切なこと。北田は「最初は精神的に非常にきついと思います」と語り、持論を述べた。
「精神的にふっ切れるしかないのかなと。(自分はイップスだと)認めた方がいいと思います。選手は調子が悪くなって『イップスかな……』と思った時、過去の自分に戻ろうとするんですよ。選手には『この時はこうしたらいい』というよかった時の感覚が必ずある。それに戻ろうとしますが、やはり戻れないんですよね。また新しいポイントに気づいていくしかない。過去よりもこれから。いろいろと試すことが大切です」
経験したからこそ、選手の心情を慮る。「でも、私のイップスはまだ軽い方だと思います。本当にイップスで悩んでいる選手は多いので」と、もがいている選手を何度も見てきた。そんな時、周囲はどうすればいいのだろうか。
「接点がある人ほど凄く気になります。でも、気にしていることを本人に伝えると、それがまた気になる。だから、そっと見守るしかないと思います。私だったらそうしてほしいです。いつかふっ切れた時に『あの時、こうだったよね』と話せるくらいがいいのかな。本人が何かのきっかけでまたよくなることがありますから」
とはいえ、指導者に求めることは異なるという。周りの選手らは「そっと見守る」ことが望ましいが、一番近くにいるコーチは「ともに戦う」ことが大切だと説いた。
「言葉よりも技術的な話をしてほしい。コーチには一緒に戦ってほしいですよね。少しふっ切れると、いろいろ試そうかなという気持ちになります。その中でもちろん精神安定剤的な優しい言葉もほしいですが、やはりゴルフは結果。スイングを変えたらそれがボールに出ますし、調子の良し悪しもボールに出る。一緒に戦っているコーチなら試行錯誤して悩みながら、また一緒に組み立てていってほしいと私は思います」
もしあなたがイップスになったら。あなたの教え子に、周りの選手にイップスで悩む人がいたら、一つの意見として参考にしてほしい。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)