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サンウルブズは存続させるべし ベテラン記者が模索する生き残るための“裏技”とは

新型コロナウイルスの影響で中止されたスーパーラグビー(SR)が13日にニュージーランドで国別の特別レギュレーションで再開される中で、5シーズンに渡り参戦してきたサンウルブズの“ラストシーズン”が幕を閉じた。チームの運営法人ジャパンエスアール(JSRA)は1日に今季の活動終了を発表。翌2日には渡瀬裕司CEO、大久保直弥ヘッドコーチ(HC)が揃ってウェブ会見を行い、シーズン終了までの経緯や現状について説明した。

今年2月のサンウルブズの選手たち【写真:Getty Images】
今年2月のサンウルブズの選手たち【写真:Getty Images】

サンウルブズが果たした功績とは? チームが生き残るための価値と可能性

 新型コロナウイルスの影響で中止されたスーパーラグビー(SR)が13日にニュージーランドで国別の特別レギュレーションで再開される中で、5シーズンに渡り参戦してきたサンウルブズの“ラストシーズン”が幕を閉じた。チームの運営法人ジャパンエスアール(JSRA)は1日に今季の活動終了を発表。翌2日には渡瀬裕司CEO、大久保直弥ヘッドコーチ(HC)が揃ってウェブ会見を行い、シーズン終了までの経緯や現状について説明した。

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 サンウルブズは今シーズンを最後に除外されることが決まっていたため、SRという舞台でプレーする可能性は断たれたことになる。チームは消滅の危機を迎えているが、多くの国内ラグビー関係者がサンウルブズの価値を認め、存続を望んでいる。20年以上にわたりラグビーを追い続けているライター吉田宏氏が、なぜこのチームがSRから除外されたかを検証しながら、チームが生き残るべき価値と可能性を考える。

 ◇ ◇ ◇

 1月31日に開幕した2020年のSRは、3月15日の第7節を終えた時点で、主催団体のSANZAARが中止を決定。サンウルブズは、所属していたオーストラリアカンファレンスのチームらが同国国内で7月の開催をめざす大会への参画を模索してきた。しかし、オーストラリア側との協議を続ける中で、参入は難しいという通達を受けた。

 最大の理由は、5月末の段階でチームのオーストラリア入国が認可されていないことだった。入国が認可された場合でも現地で2週間の隔離が必要なため、JSRAでは隔離期間中の練習を認めてもらうなどの特例を求めたが、オーストラリア政府、協会から同意を得ることはできなかった。開幕が予定される7月第1週から逆算すると、準備が難しいという判断に至った。

 会見では、渡瀬CEOが今後のサンウルブズの活動について「まだ何も決まってない」としながら、続けて「もともとは2019年ワールドカップで日本代表が勝つための強化の器としてこのチームが生まれてSRに参戦してきた。その役目は十分に果たしたのかなと思う」と、日本代表がベスト8入りを果たしたことで1つの大役を終えたという“幕引きムード”を滲ませた。

 今後のチームのマネジメントについても「われわれが選手を抱え続けるということは、いまのところ考えていない」「(サンウルブズの運営について)日本協会メインでやらないといけないと思うし、(協会主導で)やっていくことになる。ただ、よく言われている特定のリーグにサンウルブズを残していくことは、特定のリーグがあるわけではないので非常に難しい」と説明。JSRAはすでにチームの運営団体という役割を終えて、今後の法人およびチームの存亡は日本ラグビー協会に委ねられることになる。

 では日本協会は、どのようなスタンスなのか。サンウルブズの今季終了が発表された1日に、森重隆会長はこのようなコメントを発表している。

「サンウルブズの5年間の軌跡は決して消えるものではありません。(中略)今後もサンウルブズの存在によって積まれた経験値を活かし、ファンの皆様、関係者の皆様と共に、日本ラグビーのさらなる発展に向けて取り組んでまいります」

 森会長らしい正直な発言とも受け止められるが、あたかも“贈る言葉”感が漂うのが残念でならない。個人的にはサンウルブズは存続させるべきだと考えている。理由は2つある。1つはこのチームが日本代表の強化を飛躍的に後押ししたことであり、もう1つは日本ラグビーに新しいファン層を生みだしたことだ。

 代表強化については、熱心なラグビーファンならご存知のことだろう。日本協会が地球の裏側で行われているSRにわざわざ日本チームを参入させた第一の理由が日本代表の強化だった。2015年ワールドカップ(W杯)までの代表戦を見てみると、日本のようなティア2国は強化に欠かせないティア1勢との試合を十分に組むことが出来ていない。

 ラグビーの統括団体ワールドラグビー(WR)が各国のテストマッチを管理する傾向を強める中で、発言力のある強豪国の意向もあり、強化、収益の両面から、どうしてもティア1国同士の対戦を組まざるを得なかったからだ。思うように強豪国との試合が組めない日本が、打開策として選んだのがSR参戦だった。

 SRを構成してきたニュージーランド(NZ)、南アフリカ、オーストラリアは、この3か国だけで昨年までの9度のW杯で合計8度の優勝を果たしている。この強豪国のトッププレーヤーと毎週真剣勝負を繰り返すことが、日本代表を支えるメンバーにとってはテストマッチに匹敵する環境になることは明白だった。

 2015年、19年W杯で日本代表を率いたエディー・ジョーンズ、ジェイミー・ジョセフという名コーチの手腕に加えて、2016年のサンウルブズのSR参入が日本代表クラスの選手のスキル、フィジカル、そしてラグビーに取り組む姿勢を革新的に高めたことは間違いない。いわば歴代指導者と両輪で日本の強化を推し進めてきたのだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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