“内村不在”で示した日本の底力 「個人総合の白井」と「新技・ミヤチ」の可能性
体操界最高のI難度「新技ミヤチ」を成功させた宮地秀享のインパクト
「ひねりについては、側転からバク転で入って、跳ね上がる時の角度が重要です。助走をつけたスピードで力は進行方向に働くけど、しっかりと跳ね上がって角度をつけないと、ひねり切ることができない。ひねりがある分だけ上に跳びたい。かといって、全速力ではいけないし、繊細な技。伸身の2回宙返りのような思い切ってできる技と比べて、テクニックが必要になります」
今大会、内村が棄権。白井にとっては、図らずも体操ニッポンの重責を担う形となったが、見事に結果を残した。その価値も大きい。
「白井選手は若い時から一緒に日本代表で戦い、内村選手が勝ち続けた姿を見ていますが、内村選手が引退したら世代的に引っ張らないといけない立場。白井選手自身も『いずれ、引っ張っていける選手になりたい』と言っている中で、こういう状況になり、いっそう奮起できたと思うし、いい経験になったと思います」
内村の棄権と白井の躍進。2つのニュースが世間にぎわせたが、その裏では嬉しいニュースもあった。それが、鉄棒で世界初の新技を成功させた宮地秀享(茗渓クラブ)だ。
「伸身ブレトシュナイダー(伸身コバチ2回ひねり)という、今までに誰もやったことを成功させた。新技として認められれば『ミヤチ』の名前がつく、現在の体操界では最高のI難度。しかも、大舞台で挑戦し、初出場だった世界選手権で決めたことが素晴らしいと思います。種目別という会場で一人しか演技しないというプレッシャーがかかる状況だったので、なおさらです」
そんな歴史的な快挙が大々的に報道されなかったのは、結果的には次の技で落下し、メダルを逃したことが影響した。「落下さえなければ金メダルを獲れたのではないか」と岡部さんも言うが、その落下に選手としてのポテンシャルも見て取れたという。