日本サッカーの弱点をいかに補うか 歴代代表監督の言葉以上に求められる協会の指針
「お前は大きくないから、まともにぶつかれば負ける。でもその代わり動けるんだから、シンプルにボールを動かして、どんどんスペースへ出ていけば、相手は嫌がるんだ」――イビチャ・オシム
オフトがもたらした技術を生かした組織力、オシムが説いたアグレッシブに動く精神
「お前は大きくないから、まともにぶつかれば負ける。でもその代わり動けるんだから、シンプルにボールを動かして、どんどんスペースへ出ていけば、相手は嫌がるんだ」――イビチャ・オシム
これはイビチャ・オシムがジェフユナイテッド市原(現・千葉)の監督時代に、MF佐藤勇人へ向けて繰り返した言葉だという。チームへのメッセージも同じだった。
「ウチのチームは大きくない。だからその分、動けばいいんだ」
賢くリスクを冒し、アグレッシブに動く。それがオシム哲学の肝だったし、自らが描く「日本サッカーの日本化」の根幹を成していたはずだ。
また1990年代に日本代表を指揮し、92年のアジアカップで初めて大陸王者に導いたハンス・オフトがもたらしたのも、テクニックを活かした組織力だった。それまでフィジカルに優れた韓国は、日本にとって超えられない壁だった。一方で従来の日本代表スタッフは、選手を走らせては気合いを入れていたという。
「そんなことじゃ韓国に勝てないぞ!」
もっと走り、もっと戦わなければ韓国に追いつけない。そんなアプローチをしていた。だがオフトは、韓国を追いかけるのではなく、もともと日本に備わっていた別の特長で勝負をした。テクニックに組織力を肉付けし、アグレッシブな韓国のプレスをかいくぐり、逆に彼らを走らせた。すると圧倒的にフィジカルに優れているはずの韓国の選手たちが、先に肩で息をするようになった。