なぜ強いワセダが復活したのか “40日前の大敗”で植え付けられた勝つための道
明大の武井主将が語る敗因「1個、1個、フィジカルで負けた」
「ひとりひとりがゲインされた。1個、1個、フィジカルで負けた」
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自分たちが絶対的に自信を持っていた部分で早大に圧倒された明大HO武井日向主将は潔かった。
もちろん、早大がそこまでの強さを持つチームに進化したのも早明戦での完敗があったから。
「早明戦で負けて、自分たちの弱いところに本気に向き合えたのが一番良かった。弱かったのはコンタクトのところ。そういうラグビーの本質のところを明治さんから教わった」(権丈コーチ)
結果的に早明戦での完敗が早大の進化につながったように、この日の明大も前半のしくじりを後半で修正して、後半30分の時点で38-28と10点差にまで追い上げた。
王者明大に残り10分間で2本のトライを取る力が十分あることは明らかだったが、ここでも再び早大が明大のお株を奪うような前に出る力を見せて、勝利を手繰り寄せることに成功する。
「セットで対抗」できていた早大は敵陣でのスクラムからNO8丸尾が抜け出し大きくゲインして、WTB桑山淳生にラストパスを通して、勝負を決めるトライを奪ってみせた(後半34分)。
「ここまでのプレッシャーを感じたことはなかった」(明大LO片倉康瑛)
それは、この日、新国立競技場の上でプレーした明大の選手全員に共通する感覚だっただろう。しかも、それは40日前に秩父宮ラグビー場で早大の選手たちが感じたものと通じるものであったはずだ。
「(早明戦時)自分たちが思った以上に差は大きかった」(早大LO下川甲嗣)
その差を40日間で飛び越えてみせた早大。その一方で、後半の戦いから想像するに、仮に40日後に早明再々戦があったとしたらなら、またまた勝者と敗者が入れ替わる可能性は十分に感じさせた。
頂点を争うかたちで切磋琢磨していく真のライバル関係。
その歴史、つまり強い明大にいかに勝つかを極めてきた蓄積があったからこそ、早大は40日間で圧倒的と思われた差をひっくり返すことができたのだろう。
かつて日本の大学ラグビーをリードしていた両校が再び頂点を争うかたちで切磋琢磨していく時代の幕開けになるのか――。その可能性が十分あることを感じさせた、令和初、そして新国立競技場初にふさわしいレベルの高い、見応えのある決勝戦だった。
(出村 謙知 / Kenji Demura)