運動会で順位のない現代っ子「なぜ競争させないの?」 元ボクサーが運動能力向上に貢献する理由
時代に抗った運動塾、あえて競争させる飯田氏の狙いとは
「時代に抗って」と笑う飯田氏が、あえて取り入れたのが順位づけだ。学年や性別、発達障害の有無などは関係なく、同じプログラムをみんなで楽しむ。勝ち負けは明確につくが、勝敗が偏らないよう得意な子にはルールを追加。運動会で順位をつけない学校もある中、常に競い合える環境は「飽き」を生まない。中野区のジムには、小さくも楽しい“競争社会”があった。
「社会なんて競争ばっかり。なんで競争させないのかなと思います。競争させて、勝つことを教えるのではないんですよ。人として(の学びを伝える場)なので、負けた時にどうするかなんですよね。『勝つための手段や能力を身につけさせよう』ということではありません」
親しみを込めて児童の名前を呼び捨てにする。時には「やれよ!」と求めることもあるが、決して古いスパルタ塾ではない。「楽しむ」を優先しつつ、どんな競技にも役立つ体の土台ができ、集中力もアップ。中には学習能力向上に繋がる子も多くいた。「ぼーっとしていて心配」と親に連れられて入会した子も、1位になれば「よっしゃー!」と叫ぶほど変化。成功体験が成長を後押しする。子どもたちの自立だけでなく、自ら考えて自らをコントロールする「自律」も促していく。
他の子にタイムを更新されれば、目の色を変えて挑戦。「負けて悔しかったらどうするか」。喧嘩が始まれば危険なことは注意するが、基本的には見守る方針。「どうするかを見ています」。子どもに考えさせることが人間形成にも生きている。
6年生には卒業証書を授与。「社会に出て活躍することを期待します」という飯田氏の想いが込められている。「どういう大人になるか見ています。メニューを変えようかな、時代錯誤の教室なのかなと思う時もあったんですけど、これでやめたら意味ないなと。いろいろなことがやりづらい時代。やります、まだまだ(笑)」。子どもと向き合うセカンドキャリア。強い体と心を育てるのが「ボックスファイ」だ。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)