鎌田大地の“エリートではない”強さ 元スカウトが証言、豊かな人間性を育んだ父の教え
競争に身を置き続け「本当にタフな選手になった」
以前、鎌田本人も「自分はエリート街道を歩いてきたわけじゃないから。いろんな苦労をして挫折をしてきたから、例えばスタメンから外れたからって、別にちゃんと向き合うのが当たり前」ということを話していたことがある。舗装された道を歩むのではなく、自分で道を見つけ、未来を切り拓き、作り出してきたことで誰にも負けない経験を積んできた。
二宮は次のような言葉で、壁を乗り越えながら成長してきた鎌田を称える。
「一つの環境にずっといたほうが楽かもしれないけど、刺激だとか、新たな競争に身を置き続けてきたことで培われたものが確かにある。ガンバのジュニアユースに来た時だって、愛媛県から覚悟を持って大阪まで来て、学校も変わり、家も変わり、すべて変わって。そこで上に行けなくても、また次の機会を求めて、別の場所で頑張って。そうやって転々と、いろんな環境でやってきたというのが経験として積み重なって、今、本当にタフな選手になっているんじゃないかなって思います。
彼にはベースにあれだけの技術があって、そこにどんな環境でも合わせられるという能力があるのかもしれませんね。どんな監督だろうが、どんなチームだろうが、どんなサッカーだろうが、そこに合わせられる強さがあるのを感じます」(文中敬称略)
【第1回】鎌田大地は中学時代に苦しんだ 身長25cmアップ、元スカウトが見た才能“開花”前の葛藤
■二宮 博(にのみや・ひろし)
1962年生まれ、愛媛県西予市出身。中京大卒業後、西予市の野村中学校の保健体育教員を経て、94年にG大阪のスカウトに転身。強化部スカウト部長、アカデミー本部長、普及部部長などを歴任する。2021年2月よりバリュエンスホールディングス株式会社に入社(現在の役職は社長室スペシャリスト)。
(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)