「親の勝利至上主義」で全国大会廃止 今もなお、子どもに選択肢のないスポーツの課題
異常に燃える大人たち「勝ってくれ、勝ってくれ、勝ってくれ、と」
全ての子どもが五輪を目指しているわけではない。誰が、なぜ、その競技に取り組んでいるのか。人の気持ちは変わることもしばしば。大人が都度見極め、支えながら選択肢を与える必要がある。羽賀は指導者ライセンスの重要性を説いた。
「怪我をする人の8割以上は初心者なんです。原因は指導者の見極めができていないこと。無理に技を覚えさせたり、できないことをやらせたりすると怪我をしてしまう。しっかり見極めないと指導はすべきじゃない。当然、スパルタ指導はどの競技もしてはいけない。全国チャンピオンを目指しているのか、柔道だけをやるのか、掛け持ちでもいいのか。指導者がそこまで判断した上で柔道に取り組んでほしい」
全柔連は、個人登録会員数の推移を公式サイトに掲載している。2004年から21年までの過去17年間、男女各カテゴリーの合計人数は20万2025人から12万2184人に減少。特に小学生は4万7512人から2万5636人の約46%減と顕著だった。
行き過ぎた勝利至上主義が影響しているかのどうかは明らかではない。単に日本の総人口減少が理由かもしれない。ただ、羽賀が「友だちのアスリートが言っていた話」と明かしたものは的外れではなかった。
「勝ってくれ、勝ってくれ、勝ってくれ、と願う親がいる。子どもが勝つと、親の顔が立つ。子どもは自分が勝ってほしいと願うロボットだ、と」
勝ち負け以外にも競技の面白さや価値を感じてもらえたら、スポーツの未来も明るいものになるだろう。「実際にこういう場面って、今の日本のスポーツ界に結構あるみたいで……。指導者、親、子どもにも感じてほしいことは、他人との比較ではなく、子ども自身の成長です」。異常に燃え、熱を押し付けるのが問題。子どもたちの未来は、大人のものではない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)