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サッカーを「教わる」か「学ぶ」か UEFAプロ資格者・高野剛が指摘、日本と欧米選手の姿勢の違い

自分がどうありたいか、欧米では選手が自発的に学ぶ

 どちらが効率的なのかはさて置き、年間を通して毎日のトレーニングに全力で取り組もうとする日本の姿勢とは乖離している。

「与えられたテーマに脇目も振らずに、とことん取り組み続ける。それは規律に繋がるわけですが、欧米にそういう文化はありません。日本の場合は、選手だけではなく指導者も毎日が切磋琢磨。これは特長だと思います」

 日本では教員が多くの指導現場を牽引するため、サッカーを「教える」色が濃くなりがちだが、欧米では選手たちのほうが自発的に「学び」に行き、指導者はそれを導いていく。この相違は大きい、と高野は指摘する。

「欧米の子供たちは、自分の人生は自分で作っていくものだと考えています。自分がどうありたいのかは、すでに家庭の中から尊重されている。だから絶対にやってはいけないことだけは厳しく注意をしますが、時々子供たちが間違ったことをしたとしても自分で痛い目に遭うのを止めようとはしません」

 日本と欧米の相違は、やがて育成のスタンスにも投影されていく。

「欧州では、個々の選手たちのポテンシャルを最大限に引き出してあげることに主眼が置かれています。日本のように、全国大会で勝つためにチームのスタイルを尊重して、などということは全くありません。欧州では途中で別のチームに引き抜かれ、1年おきに所属クラブが変わることもある。昇格するのは、チームではなく個人です。だから個々が『オレの強みはここなんだ。そこをとことん磨くために、こういうふうに助けてくれ』という自己主張をしっかりと持っています」

 さすがに日本でも社会全体で「個の大切さ」が認識されつつあるが、優先されるのがチームなのか個なのか、そのさじ加減の割合はかけ離れている。

「欧州でもトップから底辺のアカデミーまでプレーモデルが貫かれているようなクラブは稀です。結局大別すれば、ボールを回しながら前進していくのか、縦に速いのか、になるわけですが、そこは最低限意識しながらも個人でどう貢献できるかが優先される。おそらく個が8割でチームは2割、そのくらいが当たり前です」

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高野 剛

サッカー指導者 
たかの・つよし/1973年10月4日生まれ。福岡県出身。アメリカで8年間指導者を務め、2005年からサンフレッチェ広島でジュニアユース、ジュニア、トップのコーチを歴任した。2010年にイングランド3部のハダースフィールド・タウンFCの育成組織に入団。日本人2人目となるイングランドサッカー協会(FA)公認・欧州サッカー連盟(UEFA)公認A級指導者ライセンスを取得した。2012年にサウサンプトン、2013年にアビスパ福岡のコーチ、2015年にタイのBBCU FCで自身初の監督を務め、タイ・プレミアリーグ昇格へ導く。2016年から3年間ギラヴァンツ北九州のU-18監督やアカデミーダイレクターを務め、2018年にアジア人初となるFA及びUEFA公認プロライセンスを取得。また、Jリーグフットボール本部育成部に所属し、育成改革プロジェクト「Project DNA」の立ち上げに関わる。2021年、STVV(シント=トロイデンVV)のHead of Football Strategy & Development 及びManaging Director of Youthに就任しチームの根幹を支えている。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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