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駅伝は「いい子ちゃん」ではダメ 大東大監督、全日本14位で選手に伝えた箱根への覚悟

ワンジルの1区起用は「爪痕を残す狙いがあった」

 そして真名子監督自身も、箱根予選会と全日本大学駅伝という本番のレースの違いを痛烈に感じたという。集団でまとまった結果を出す予選会と、1人ひとりの走りが勝敗を分ける駅伝は、根本的に違うレースだ。真名子監督は、その違いを事前に理解できなかったことは「自分のミスだ」と語った。

――予選会と本番のレースの違いについて、改めてどう感じていますか。

「予選会を通るには、“いい子集団”で走ればいいからっていうのを伝えていました。特段のブレーキさえなくせば、予選会は通るので。でも駅伝本番は、特段のブレーキなしに走らせたら出遅れていく一方だった。レース後、選手には『田澤(廉/駒澤大)や近藤(幸太郎/青山学院大)の走りを見てみろ。あれだけ突っ込んで入って、中盤は耐えて、後半にもう1回上げて走っていた。それはファイターじゃないとできない。駅伝はいい子ちゃんではダメだ。荒々しさや精悍な走りができないとダメだ』という話をしました」

――学生たちが力を発揮できなかった要因は?

「経験不足があったと思います。それは個人というよりもチームの経験不足で、全日本が今の4年生にとっても初めての駅伝だったんです。ローカルな駅伝にも前監督、前々監督とも出していなかったので、襷を繋ぐことをよく分かっていない。それに加えて怖さもあったと思います。2区の菊地(駿介/3年)は、後ろから佐藤圭汰(駒澤大/1年)や三浦龍司(順天堂大/3年)ら次元の違う選手というか、ライオンとヒョウみたいな選手が来たら、それは委縮してしまいますよ」

――留学生のピーター・ワンジル(2年)を1区に起用したのは、どんな理由があったのでしょうか。

「惨敗することもあるかなと思ったからです。ピーターを7区か8区の長距離区間に置いて、区間賞を獲っても一切、テレビに映らない区間賞になってしまう。でも、1区でピーターを走らせておくと、これから大東文化が復活していくなかで何かしらの爪痕を視聴者に残すことができる(結果は区間新記録で1位)。今回はそういう狙いがありました」

――1区以降は、ずるずると後退していく感じでした。5年ぶりに出場したことで、チームとして一定の満足感を得られた部分があったのでしょうか。

「今年は全日本大学駅伝と箱根駅伝に戻ろうという目標を掲げていたので、これを2つとも達成できた。その上、箱根予選会はトップ通過だったので、そこで選手の気持ちが1回切れてしまったというのはあったと思います。やっぱり(出雲駅伝を含めた)3大駅伝に出ている大学は、出て当たり前で、うちと違って出ただけでは満足しない。そういう大学と戦っていくのだから、その“当たり前のレベル”の差を埋めていかないといけないですね」

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真名子 圭

大東文化大 陸上競技部 男子長距離ブロック監督 
1978年生まれ、三重県出身。選手時代は大東文化大で箱根駅伝に4年連続で出場し、4年時には10区で区間賞の走りを見せた。本田技研(現・Honda)で競技生活を終えると、三重での高校教員を経て2012年に仙台育英高に赴任。陸上競技部長距離男子の監督としてチームを強化し、19年の全国高校駅伝で優勝した。今年4月、低迷していた母校に戻ると全日本大学駅伝、箱根駅伝と本戦出場に導いている。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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