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“日本一速い”上野裕一郎監督が並走 箱根駅伝を狙う立教大、選手の成長促す異色指導

選手の間から出てきた「監督に勝て」の声

 上野監督は、身が一つなので、もちろんすべてを見切れるわけではない。だが、集団走で、ちょっと怪しいなと思う選手が多いところがあれば、あえてそのチームに入って走るようにしている。そうして選手をアシストし、また選手の情報を蓄えるのも監督の重要な仕事だ。

 上野監督は練習だけではなく、記録会やレースにも出て選手を引っ張っている。

「記録会やレースは、基本的にペーサーの依頼がない限りは、自分のチームの選手がいるところで同じタイムで申請し、選手を引っ張っています。やっぱり目標タイムをクリアしてほしいですから。あとは、学連記録会みたいに『ペーサーで66秒台で入ってください』とお願いされたり、高校の先生に『タイムを出したい生徒がいるんだけど、この大会、お願いできるか』と言われて、勧誘を兼ねて行くケースもあります。たまに、いきなり『3日後にやってください』と言われたりするんですけど、それはさすがに無理ですね(苦笑)」

 オファーを受けた場合、だいたい2週間から1か月程度、準備していく。レースシーズン、上野監督の体が絞れているのは、そのためだ。夏合宿でも走る量が増えるせいか、選手よりも絞れており、研ぎ澄まされた感があった。

 選手たちを引っ張り、目標タイムを達成するための並走でありペース走だが、最近は目的が少し変わってきている。監督がターゲットになりつつあるのだ。

「最近、選手が強くなってきて、練習で1000メートル1本のタイムトライアルで私に勝つとすごく嬉しそうな顔をしているんです。練習で競っていると『監督に勝て!!』と声が上がったりして、私に勝つのが目標になってきているんですよ。実際、勝つ選手が出てきていますし、明大対抗戦の1500メートルでは林(虎太郎・2年)にガチで負けましたからね。自分を超えて選手が成長している姿を見るのは、指導者としてすごく嬉しいです」

 ただ、まだ選手が簡単に勝てるほど上野監督は甘くない。7月、網走での学連記録会5000メートルB組では、林ら4名の選手が出走し、上野監督が4800メートルまで引っ張った。林が13分49秒74で自己ベスト更新、立大記録をマークしたが、ラストは上野監督に離されてしまった。

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上野 裕一郎

立教大学 陸上競技部 男子駅伝監督 
1985年生まれ、長野県出身。佐久長聖高校1年時から駅伝で区間賞を獲得するなど活躍し、1万メートルで日本高校記録を出した。中央大学でもスピードを武器に1年時から箱根駅伝など主要大会で数々の好成績を残した。エスビー食品へ進むと、2009年には5000メートルで世界陸上ベルリン大会に出場。13年からはDeNAに移籍し競技を続けていたなか、18年12月に立教大学陸上競技部の男子駅伝監督に就任。現役選手としての活動も継続する「ランナー兼指導者」として、チーム強化に努めている。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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