箱根駅伝のスターから「走る」指導者へ 立教大・上野裕一郎監督、55年ぶり本戦への挑戦
高校時代の上野監督に刺さった恩師の言葉
上野監督は高校時代、両角監督がグラウンドの草刈りをしたり、練習メニューを考え、大会への申し込みをしたり、バスを長時間運転したり、生徒の勧誘をするなど、選手が良い環境で練習できるように尽力する姿を見てきた。
「だから、ちゃんとやらないと両角先生は怒るんです。立教の選手も君のために、どれだけの人が動いているのかを理解して、陸上に取り組んでほしいということです」
就任3、4年目になると、スポーツ推薦で入部してくる選手が増えた。だが、それでチーム全体の力や意識が急に高まるわけではない。例えば練習の取り組みにしても、誰も見ていないなかで、普段と同じように練習ができているかというと「怪しい」と上野監督は言う。
「スポーツ推薦の選手全員がすごく意識が高くて、順調に伸びていくわけではなく、1年生で強くなる選手もいれば、高校時代の自己ベストをなかなか更新できない選手もいます。怪我が増えて主力組に入れないと、なんのためにやっているんだろうと思う選手も出てきます。そこで、自分の将来を考えて、なんとなくやっておこうというのはもったいないと思うんですよ。諦めるのではなく、もっとやれると自分を信じて取り組んでほしいですね」
20年前、両角監督の「人に見られていないところでも、見られているように頑張りなさい」という言葉は、当時の上野監督に刺さり、それから努力で道を切り拓いていった。そして、それは今の選手たちにも通じる普遍的な教えでもある。
(佐藤 俊 / Shun Sato)