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子供の自主性をいかに育むか サッカー指導に一石を投じた達人の巧みな話術

指導者が率先して靴を並べ、後片付けをする

「よう履いたな。靴がクツクツ笑っているかもしれん。これでは滑って危ないかもしれんから、ご両親にお願いしてみなさい」

「やったあ、じゃあ買っていいですか?」

 大喜びする子供を見て、浜本はすぐにクギを刺す。

「おお、お前がお金を持っているのか?」

 浜本は、人に指示をするのもされるのも嫌いだ。だから「挨拶せえ」とか「整頓せえ」とは言わない。会えば自分から挨拶をするし、遠征に出かければ率先して靴を並べ、後片付けをしてきた。それを見て、子供たちもやるべきことを学び取ったのだ。

「些細なことでも、あらゆる機会を捉えて絆を作り、人間性を育んでいく。中には使い終わったシューズを綺麗に洗って飾る子もいるんですよ」

 今ではJクラブでも、高額塾に通い、頻繁に高価なスパイクを買い替えるエリートが目につく。だがそんなエリートが、大人になった時、本当に世界に伍して戦えるのだろうか。

 実は達人は、エリート組織でも忘れがちな育成の要諦を、しっかりと伝え続けているのかもしれない。

(文中敬称略)

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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