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日本サッカーと“韓国コンプレックス” 「一生勝てない」意識を払拭した名将の教え

「日本には、技術や組織力という韓国とは別の特徴がある。それをオフトは教えてくれたんです」――福田正博(元日本代表FW)

日韓戦【写真:Getty Images】
日韓戦【写真:Getty Images】

日本人選手の苦手意識を変えたオフト監督の指導法

「日本には、技術や組織力という韓国とは別の特徴がある。それをオフトは教えてくれたんです」――福田正博(元日本代表FW)

 アマチュア時代の日本にとって、韓国は超え難い壁だった。ドイツから特別コーチとしてデットマール・クラマーを招聘した時期には、メキシコ五輪で銅メダルを獲得するなど互角に戦えたが、1970年代以降は圧倒的な劣勢が否めなかった。

「ミスターレッズ」と呼ばれた福田正博が日本代表として活躍するようになったのは、アマチュア末期だった。福田は当時の指導者に、こう言って気合いを入れられてきたという。

「そんなことじゃ、韓国に勝てないぞ」

 もっと走れ、もっと戦え、の先に、この言葉が浴びせられた。当時の選手たちの“韓国コンプレックス”は根深く、特にフィジカルの強さだけは太刀打ちできないと思っていた。

 例えば、日本国籍を取得して初めて日韓戦に出場したラモス瑠偉は「こんなんじゃ、一生勝てない」と吐き捨てた。

 しかし、そのコンプレックスを払拭したのが、Jリーグ開幕前夜に日本代表監督に就任したハンス・オフトだった。オフトは、初めて臨む韓国戦の直前に1枚の紙を手に選手の前に現れる。

「キム、パク、チェ…」

 韓国のスタメンを読み上げ始めたが、途中でどうでもいいとばかりに破り捨ててしまった。

 相手を怖れる必要はない。相手が誰だろうと関係ない。自分たちの良さを出せばいいんだ、という意思表示だった。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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