「高校生とは思えない」人間力はいかに磨かれたか 部活の枠を超えた主将の姿に賛辞
将来経営者を目指して卒業後はアメリカへ留学
プロジェクトが発足して3年間で、ピッチ上の空気は一変した。以前は大きな背番号を手渡されただけで不貞腐れたり、インタビューへの指名から外れただけでモチベーションを失ったりする選手もいて、ピッチの内外ともに個々の真剣味や熱量には落差があった。
プロの基準を見据えた上船総監督は、連日「一つ一つのプレーにこだわり、1分1秒も無駄にしないトレーニング」を求めてきた。
だが今では、わざわざそれを言葉にする必要はなくなった。相生学院のトレーニングを視察したり、練習試合の相手になるチームの関係者たちは「みんな凄い集中力。本当に気持ちがいいですね」と口を揃えるようになった。
「今なら彼らは何も言われなくても100%のハードワークをするし、それを仲間同士で求め合う。きっとどんなタイプの指導者がやってきても、そこは変わりませんよ」
そう言って上船は目を細める。
「ここに残った12人の一期生たちが文化を作った。プロジェクトを支えるために、みんながやり切ってくれたんです。普通の中学生でも、やり方次第ではこれだけできる。それを証明してくれました。そして琉聖は最大の功労者。彼なしにプロジェクトは、ここまで来られなかった」
卒業後の白倉は、将来経営者を目指すためにアメリカへ留学をしてサッカーを続ける予定だ。人間力を磨き可能性を広げる。それもプロジェクトとしては一つの成功の形である。(文中敬称略)
(加部 究 / Kiwamu Kabe)