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答えのない問いを乗り越えるために
――最後に、指導者やスポーツ選手の皆さんに伝えたいことはありますか?
「これまでは、誰もが科学や文明の発達を信じていて、何か良いトレーニング方法があるはずだ、何か良い特効薬があるはずだと簡単に答えを求める傾向が強かったと思います。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大で、今、誰も答えを持たない状況に陥ってしまいました。選手にとっては、目標にしてきた試合がなくなり、ゴールすらも見失っている状態でしょう。
そうなると新たな力であるネガティブ・ケイパビリティ(※2)を鍛えることが求められます。ストレスも大きいですが、新たな成長ができるチャンスでもあると捉えてもらうと良いと思います。
答えのない問いと向き合い続けるためには、いかに希望を持つのか、持たせるのかが大事になってきます。ゴールの見えない中では長い期間戦い抜くことができないですからね。小さいことでも良いので目標設定をすると良いと思います。選手も指導者もこの状況を乗り切り、新しい力を身につけていきましょう」
※1「ウエアラブル端末」 衣服や腕、首など身に着けられる装置や小型のコンピューターのこと。手首につけることで、心拍数など情報を収集し、健康管理をする腕時計型デバイスや、ウエアの一部として装着し移動距離や運動量を計測するためのGPS通信を行うデバイス、耳に装着することでハンズフリーで通話可能なイヤホン型デバイスなどがある。
※2「ネガティブ・ケイパビリティ」 答えがなく対処しようのない事態に対して、事実や理由をすぐに求めず、耐える能力のこと。
(記事提供TORCH)
■西多 昌規 / 精神科医(医学博士)早稲田大学・准教授
1970年生まれ、石川県出身。1996年東京医科歯科大学卒業。東京医科歯科大学助教、自治医科大学講師などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授に。ハーバード大学医学部、スタンフォード大学医学部にて留学研究歴がある。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会専門医、日本老年精神医学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本スポーツ精神医学会理事など。専門は睡眠医科学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。著書に『「テンパらない」技術』(PHP研究所)、『休む技術』『集中力を高める技術』(大和書房)など多数。
(ドットライフ・種石 光 / Hikaru Taneishi)