為末大、五輪延期で考えるアスリートのピーキング「心にも体力がある、これを忘れずに」
「心」をキープ・リフレッシュできるかどうかが、明暗を分ける
2021年7月開催まで1年以上の猶予があり、どのようにピークを合わせるか。そこで私なら真っ先に「心はそこまで持つかな」と考えます。もし自分が現役選手だとしたら、心を張り詰めたままの状態でさらに1年は持たせられません。とはいえ、2021年夏に勝負を挑むことは決定事項。そこで思い切って、今から2020年の8月くらいまでのスケジュールを全て外します。
自分の心を“フレッシュ”にしておかないと、次のステージには入っていけないからです。つまり、「何は変えられて、何は変えられないのか」を整理し、自分がどうすればベストな状態にいられるのかを考え、行動します。ちなみにスケジュールを全て外すというのは完全なオフにするかもしれませんし、自主練習だけにするかもしれないというレベルです。トップアスリートでも2年間、張り詰めた状態を保つのは難しいのです。
もう一つ、大事なことがあります。それは「自分を過信しないこと」です。
自分の心を過大、もしくは過小評価してしまうと、ピーキングを見誤ってしまいます。若いアスリートはどちらかというと過小評価する人が多くて、「まだやれるよ」と言われるかもしれません。やれないのに、やってしまう。これによって起こる致命的なことは、モチベーションが切れること。表に見えづらいからでしょうか。見過ごされることが多いのですが、心はとても重要です。身体的な怪我と違って、心の不調は複雑で難しいので、こちらの方が致命傷になることもあるくらいリスクの高いことです。