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キッズ年代にエリート教育は必要か ドイツ人指導者が訴える「結果より体験」の大切さ

友人指導者が嘆いていた。

日本とドイツのキッズ世代の育成の違いとは?【写真:Getty Images】
日本とドイツのキッズ世代の育成の違いとは?【写真:Getty Images】

【ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」】「エリート」という枠組みにおける選考の難しさ

 友人指導者が嘆いていた。

 日本では全国的にサッカーのキッズ年代エリートプログラムという活動が行われているが、とある地域の活動日での話だ。それぞれ各地区から選抜された子供たちを対象にしたトレーニングということらしいが、集まってきた子供たちは味方同士でなかなかプレーにつながりを持つことができない。

 一つ一つの技術やフィジカル能力を分けて見てみると、確かに優れたところを感じさせる。ドリブルやキック、身のこなしなどはみんな悪くない。でも子供たち同士で上手くいかないプレーについて話し合うこともなければ、どうすればそれぞれの状況でもっと上手くプレーできるかを自分で考えてやろうという風にも見えない。中には平気で、友だちが傷ついてしまうような言葉を言ってしまう子もいたという。

 ふむ、これがキッズ年代のエリートを集めたプログラム?

 じゃあ、エリートってなんだろう?

 足下の技術が上手い選手? 身体能力の高い選手? 戦術理解が深い選手?

 日本サッカー協会のキッズ年代エリートプログラム要綱には、「真の意味のエリートとは、社会の各分野でのリーダーであり、特権階級ではなく、本来むしろ戦場で先頭に立って闘いに行く存在です。その者達には常に重大な社会的義務が伴います。能力の高い者は良い環境と指導を与えられ、社会に対する責任を果たす存在となるということです」との記載がある。

 では、そのために求められる能力というのはなんだろうか。

 要綱に記載されているように「エリート」とは「偉い人」とか「凄い人」ではなく、常に手本となる行動を取ることができ、人の弱さを守ることができ、人の前に立って体を張ることができ、苦しい時にポジティブな雰囲気を作り出すことができる人を指し示すのではないだろうか。

 もしそうなのであれば、様々な誤解を招きかねないことを承知で、あえてキッズエリートという言葉をつけるのであるならば、選考に際して正しい評価がされなければならないだろうし、サッカーというスポーツを本質から理解し、エリートという言葉の重み、意味を正しく解釈できる指導者育成が行われていかなればならない。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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