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「僕なら絶対使わない」選手がスタメンに 部員もメンバー選考、監督視点と異なる“肌感覚”

堀越高校サッカー部では、試合を行うたびに部員が持ち回りで分析を行い発表をし合っている。それは公式戦でも、対戦相手が中学生でも変わらない。各自が分析した映像を持参し、すべてのスタッフ、部員たちの前で報告をする。佐藤実監督が笑みを浮かべながら教えてくれた。

堀越高校サッカー部では部員が試合を分析して発表し合っている【写真:大会公式提供】
堀越高校サッカー部では部員が試合を分析して発表し合っている【写真:大会公式提供】

【堀越高校サッカー部“ボトムアップ”革命|第3回】部員が試合を分析して発表、日々の練習メニューも選択

 堀越高校サッカー部では、試合を行うたびに部員が持ち回りで分析を行い発表をし合っている。それは公式戦でも、対戦相手が中学生でも変わらない。各自が分析した映像を持参し、すべてのスタッフ、部員たちの前で報告をする。佐藤実監督が笑みを浮かべながら教えてくれた。

「内容は日増しに進化していますよ。おそらく全員が年に一度くらいは発表することになると思います。専門家が分析をすると、どうしても上から目線になり、綺麗にまとめたり粗探しに終始したりしてしまいがちです。その点、彼らは実際にプレーして感じたものも入ってくるので、外から見ている僕らの印象と違っていて凄く新鮮に感じられます」

 こうして月曜日に課題を共有し、1週間のサイクルが始まる。木曜日には佐藤がさらに映像をコンパクトに加工し、理解を深めて週末の試合に臨む。トレーニングは隙間なく流れるように、というのが、監督からの選手たちへの要望だ。

「ウォームアップでやることは決まっているし、トレーニングメニューも何種類かにパターン化されています。月曜日に浮き彫りになった課題に取り組むために、どのメニューを選択するかも決まるので、各自トレーニングに臨む前にはどんなテーマのどういうメニューが行われるのか頭に入っています。一つのメニューが終われば、次に何をやるのか全員が分かっているので、選手たちがスムーズにマーカーやコーンなどを準備していく。むしろ今何をやっているのか、一番戸惑うのは僕らスタッフかもしれません」

 トレーニングメニューを選択するのは選手たちだが、時々監督やコーチが相談を受けることもある。

「こんな新しい課題が出てきたんですけど、どんなメニューが効果的ですかね?」

 監督も頭を捻り提案をするが、必ず採用されるとは限らない。

「監督が言っているけど、これ、ちょっと分かり難いから止めておこう」

 上手くいかないと判断すれば、選手側も躊躇なく却下する。佐藤は苦笑した。

「自分でももう一つ腑に落ちていない提案をすると、すぐに不採用になってしまいます。だから僕らもできるだけ分かりやすく、しっかりと課題が見えてくるメニューを提案しなければなりません。選手権予選で結果も出たので、ますます不採用になることが多くなるだろうな、と感じています」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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