「腹の出たオヤジが超上手い」 育成出身コーチが断言する、日本サッカーの“幸福な未来”
サッカーは「超楽しいもの」だと、2018年からなでしこリーグ2部のちふれASエルフェン埼玉を指揮する菅澤大我は言い切る。
【“読売育ち”菅澤大我、気鋭コーチの育成論|最終回】「超楽しい」サッカーの基盤にある「裏をかくプレー」
サッカーは「超楽しいもの」だと、2018年からなでしこリーグ2部のちふれASエルフェン埼玉を指揮する菅澤大我は言い切る。
その楽しさの基盤を成すのは「相手の裏をかく」ことだという。
1973年、日本サッカーがアマチュアだった頃の話である。JSL(日本サッカーリーグ)でプレーした元プロのセルジオ越後がCKからのボールを胸で止め、シュートモーションに入ると相手GKを含めてDF全員が後ろを向いてしまった。セルジオはそれを見て、軽くポンとゴールネットを揺する。
「蹴ると決めたら必ず蹴る。そんな融通の利かないプレーばかりで、フェイントをかける楽しさも、かけられる悔しさも知らなかった」(拙著「サッカー移民」よりセルジオ談)
だが1969年創設の読売クラブ(現・東京ヴェルディ)では、当初からジョージ与那城を筆頭に「裏をかく楽しさ」の表現者が存在し、日本の選手たちもそれを引き継ぐ流れができていた。
菅澤は語る。
「相手の逆を取り、内心でニヤリとほくそ笑む。それが楽しさの原点。まずカジュアルな裏の取り方があり、本質的な素晴らしい裏の取り方があって、それができるようになると今度はチームとして相手の逆を取れるようになる。それを知ることができる環境を整えてあげるのが、僕らの仕事のすべてと言ってもいい」
熱弁は続いた。
「逆を取れて楽しいと感じる。それが一つのゴール。でもそこで終わるわけではなく、プレーは続いていく。サッカーでは、いろんな“ゴール”があっていい。いくつもの通過するゴールを散りばめておくと、選手たちもきつくても自然と走る。終わってみたら“あ~、きつかった”と、それがベストなトレーニング。もちろん要領よくさぼる選手もいて、それが悪いとは思わない。でもそこで“あと2歩3歩動かないといけない”と思えるようになると、“タフ”という項目が伸びていく」
実は昭和の指導者のみならず、多くの選手たちが勘違いをしている。
「同じ時間を素走りするのと、ボールを使いながら走るのでは、絶対に後者のほうが負荷が高いんです。でもほとんどの選手たちは、ボールを使ったほうが楽だと信じていますよ」