かつての弱小サッカー部が掴んだ夢の全国 部員160人を支えた“女子マネ2人の献身”
苦しみ、掴んだ悲願のインハイ切符「全員にとって未知の世界、これから先のことは…」
大成は初戦の日大鶴ケ丘戦こそ6-0と大勝するものの、その後は延長戦続きとなり、辛くも勝利する。そして、全国をかけた準決勝の相手は、豊島監督の母校でもある古豪・帝京。またしても試合は延長戦にもつれ込み、それでも決着がつかず、PK戦へ。最後は大成の9人目キッカーが決めて、ついに全国への切符を手に入れた。
「PKが決まった瞬間、うれしくて涙は出るんだけど、全国に行けるんだ、という実感がわかなくて、不思議な気持ちでした。でもその後、『インハイが決まったのはマスコットのおかげだよ』と選手のお母さんたちに言われて、グッときました」(新井さん)
さて、大成は、現2年生の大久保さんを最後に、女子マネージャーを採用していない。今後は、選手たちをステップアップさせる意味で、「自分たちのことは自分たちでやる」環境にシフトしていくという。
「2人だけになってから、選手たちも自然と自分たちで動くようなりました」と新井さん。「でも、どの高校もマネージャーの仕事は変わりません。だから160人いるから私たちが大変なのではなく、マネージャーが少ない分、むしろ選手自身がやることも多いんですよ」
代々、マネージャーに受け継がれていた伝統行事もある。クリスマスにはケーキを焼き、バレンタインデーにはチョコレートを作る。もちろん、部員全員分だ。そして、選手権予選前には、ミサンガを編んで渡すのだ、という。
来年は女子1人になって大変そうだね、というと「うちの代の選手は、よく協力してくれるから大丈夫」と大久保さん。「逆に私が何とかやっていけているのも、彼らのおかげです」(大久保さん)
マネージャーを続けてきて良かったことは、「チームとともに、自分も成長できること」と新井さん。「結局、私たちにできることは、練習や試合に集中できるよう、フォローすることぐらいです。選手からは厳しいこともたくさん言われるけれど、自分にプラスになることばかりだから、感謝しています」。
インターハイでは初戦、名経大高蔵(愛知)と対戦する。「どこの高校と当たっても、うちより格上」と豊島監督。それでも、出場するからには優勝を目指す、と話す。「私自身を振り返っても、全国で戦った経験は何よりの財産として残っている。『初出場の学校が何を言っているんだ?』と思われるかもしれませんが、選手たちが一歩も引かない覚悟で試合に臨めるよう、しっかりと導いていきたい」
「都の準決勝から沖縄入りまで、本当にあっという間。全国という舞台は全員にとって未知の世界だし、これから先のことは……よくわかりません(笑)。実際に沖縄に入ったら、色々と、実感が生まれるのかな」(新井さん)
キックオフは7月26日。大成高校サッカー部史上初の、熱い夏が幕を開ける。
◇インターハイのサッカー男子は7月26日から8月1日まで熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト「インハイTV」を展開。インターハイ全30競技の熱戦を無料で配信中。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。
(THE ANSWER編集部)