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なぜ、部活の走り込みは嫌われるのか 「走って根性を鍛えろ」の教えは正しいか

「なんとなく根性がつきそう」では選手のモチベーションにはつながらない

 走り込みが重視される部活の一つが、野球部だ。昨シーズンから阪神の臨時スプリントコーチを務め、野球の現場を見てきた秋本氏。「プロ野球選手はキャンプで朝から晩まで、ひたすらピッチング、バッティングをやる。それを反対に自分がやってみたら絶対に楽しくないし、それこそ罰則になると思いました」と立場を置き換え、走り込みが嫌われる原因について持論を語る。

秋本「僕が野球をやって罰則に思うのは、どうやったら上手になるか分からないということ。目的が明確にはならない。野球部にとっての走り込みも一緒だと思います。走りを通じて自分がどうなるか分からないから、ただつらいとなってしまう。正しく走ることで速くなるし、効率的になって楽になるし……と指導者がしっかりと説明できたら、意識は変わるのではないかと思います」

 競技と直接的な関連性を感じにくいことで敬遠されると秋本氏は力説する。伊藤氏も同調し、“目的意識”の重要性を説く。

伊藤「そもそも何のために走り込みをするか、ではないでしょうか。陸上選手は例えば、目標とするタイムを設定し、タイムを縮めるために理想の走りがあり、理想を実現するために様々な手段がある。その一つが走り込みです。野球部の子供たちにしてみれば『走り込みをして何につながるの?』と、みんな思ってしまう。目的にリンクしないと自分からやろうと思えないはずです」
 
 目的が見えない練習の原因は指導者にあることが多い。

伊藤「野球の走り込みは何につながるのか、コーチに聞いても答えられないことが多いのではないでしょうか。『足腰を鍛えるため』と漠然とした意見も聞きますが、そもそも『足腰』とは足と腰のどちらで、どの筋肉を使って、どんな能力が高まるのか。その結果、野球のどんな場面に生きるのか、という部分が明確ではありません。そうなってくると、選手が練習に対してコミットしづらくなります」

 走り込みの“大義”として挙がるのが、根性論だ。「いっぱい走るから、なんとなく根性がつきそう、足腰が鍛えられそうという、ふわっとした理屈が選手のモチベーションにつながっていかないのではないかと感じます」と伊藤氏。その上で「例えば、野球で求めているような“足腰を鍛える方法”は走り込みではないと思います」と指摘する。

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伊藤 友広

元陸上五輪代表

国際陸上競技連盟公認指導者資格(キッズ・ユース対象)。

1982年8月16日生まれ。秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。大曲高(秋田)で国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権400メートル5位、同1600メートルリレーはアンカーで優勝。国体成年男子400メートル優勝。卒業後は法大に進学。04年アテネ五輪男子1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
http://001sprint.com/

秋本 真吾

プロスプリントコーチ

1982年4月7日生まれ。福島県出身。双葉高(福島)を経て、国際武道大―同大学院。400メートル障害で五輪強化指定選手選出。200メートル障害アジア最高記録(当時)樹立。現在は伊藤友広氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、全国のかけっこ教室で延べ7万人を指導。また、延べ500人以上のトップアスリートも指導し、これまでに内川聖一(ヤクルト)、槙野智章、宇賀神友弥(ともに浦和)、神野大地(プロランナー)ら。チームでは阪神タイガース、INAC神戸、サッカーカンボジア代表など。
http://001sprint.com/

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