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「それが部活の良さ」 大久保嘉人、“国見史上最弱”が育んだ反骨心「死ぬほど練習した」

「自分が成長できるチームを選ぶべき」と語る大久保(写真はスクリーンショットより)
「自分が成長できるチームを選ぶべき」と語る大久保(写真はスクリーンショットより)

C大阪行きを後押しした尊敬する選手の存在

「俺は、小嶺先生から『セレッソ(大阪)かアビスパ(福岡)か、どちらかに行きなさい』と言われました。どちらのチームにも国見のOBが4人いたんです。最終的にはセレッソを選びました。サテライトの試合を見ていてサッカーが面白いなって思ったし、九州から出てみたかったというのもある。でも、一番はトップチームに森島(寛晃)さんがいたことですね。背丈も同じぐらいだし、めちゃ上手いのでプレーを盗みたいなって思いました」

 森島からいろいろ学び、成長したい――。それがセレッソ大阪を選択した大きな理由になっているが、これは今、高校生や大学生がクラブを選ぶ際にも大事なことだと大久保は言う。

「最初に選んだチーム、加入するチームはすごく大事。高校のスーパースターが強いチームに行くのはいいけど、試合に出られないと終わってしまう。だから、試合に出られて、そこに尊敬できる選手がいて、その人に教えてもらいたいなって思うところに行くべきだと思う。プロに行けば絶対に壁にぶつかるし、高校のエースは壁の乗り越え方が分からない選手もいると思うので、そういう時、尊敬できる選手がいればなんらかの力になってくれる。そうして自分が成長できるチームを選ぶべきだね」

 C大阪を出発点に、大久保はJ1リーグで191点ものゴールを積み重ねてきた。そのゴールを支えたのは、国見高校時代の鍛えられたフィジカルや走力がベースになっている。1、2年の時は裏のたぬき山(10キロ)を走った。300メートルを45秒程度で5回走る時間走は制限タイムが決められており、1人でも遅れると「たぬき山」に送られる。足が遅いGKは大久保らが後ろから押して、泣きながら走るも最後は吐いたり、意識が薄れてしまう選手が出た。

「俺らの代は、みんな下手くそで、国見史上最弱で、小嶺先生に『お前らに何も期待していない』って言われていたんですよ。それが悔しくて、『俺たち絶対に勝つぞ』ってみんな死ぬほど練習していた。走りの練習もそうだけど、そういうので一体感って生まれるんです。それが部活の良さかなって思う」

 クラブユースの選手と部活上がりの選手はよく比較されるが、それぞれに良さがある。大久保は部活の良さについて、こう語る。

「部活は、理不尽なことだらけの中で、そこでどう耐えて、立ち向かうかを考えて生きていかないといけない。だから、めちゃくちゃ精神的に鍛えられる。練習はユースがどんなことをしているのか知らないけど、部活はきつい、厳しいことだらけ。でも、そこで鍛えられたベースは、プロになって活きた。若い時に体と気持ちが鍛えられるのって大事ですよ。あんまり気持ち、気持ちって言うと古い年代かって言われるけど、それは部活もユースも、どの年代にも必要なことだと思うんです」

 そういう気持ちは、サッカーのどんなシーンに表れるのだろうか。

「例えばボールを奪われた後とか。気持ちがないとダッシュして取り戻そうとせず、フラフラして自分のポジションに戻っていく。俺らは取られたら最後まで必死に追いかけて、取り返そうとした。『気持ちを見せ、責任を持ってプレーしなさい』って小嶺先生からすごく厳しく言われたからね」

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大久保嘉人


 1982年6月9日生まれ、福岡県出身。国見高3年時に高校3冠を達成し、インターハイと高校選手権では大会得点王を獲得した。2001年にセレッソ大阪でプロキャリアをスタートさせると、闘争心溢れるプレーで存在感を発揮。03年に日本代表デビュー、04年にはU-23日本代表の一員としてアテネ五輪に出場、10年にはA代表の主力として南アフリカW杯ベスト16進出に貢献した。マジョルカ、ヴォルフスブルクでのプレーを挟みながらヴィッセル神戸に通算6シーズン在籍すると、13年に川崎フロンターレに移籍。1年目でキャリア最多26ゴールを決めると、史上初のJリーグ3年連続得点王の偉業を達成した。今季、古巣のC大阪に復帰し歴代最多となるJ1通算191得点にゴール数を伸ばすも、11月19日に今季限りでの現役引退を発表した。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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