人の心を動かす女子バレー 元代表監督の眞鍋氏が考える「魅力」と「パワーの源」
2012年のロンドン五輪…「データには一切表れない」無限の可能性を証明
そんな“奇跡”と言ってもいい、無限の可能性を示した代表例が、ロンドン五輪である。
「我々のデータには一切表れません。本当に不思議ですよね。でも、これがチームスポーツ、女子バレーです」
眞鍋氏がそう口を開いたのは、9月2日のこと。大塚製薬が企画し、バレーボール、サッカー、バスケットボール、柔道、テニス、バドミントンを通じて全国170校の部活生を応援する「ポカリスエット エールキャラバン」の一環で東海大高輪台高を訪問した際、全校生徒を対象とした講演の中でひとつのエピソードを明かした。
今から遡ること5年。ロンドン五輪開幕を一か月後に控え、眞鍋氏はある決断を迫られていた。世界の舞台に送り出す12人の選出である。熟考に熟考を重ねた末、名将がメンバーから外したのは、ウイングスパイカーの石田瑞穂(当時・久光製薬/現デンソー)だった。
「石田は毎日、一番早く練習に来て、雑用も率先してやってくれました。練習中には一番声を出してくれるムードメーカーです。約3年半、最後まで頑張ってくれましたが、仕方なくメンバーから外しました。なぜか? ルールだからです。最後の1人、本当に悩みました」
厳しい競争の世界、ましてや五輪への切符を手にできるのはわずか12人しかいない。生き残る者がいれば、当然脱落する者もいる。石田の努力を間近で見てきた選手たちはそんな厳しい現実を受け入れつつも、一つの提案を監督に申し入れたという。
「選手全員から『石田と一緒にオリンピックに行きたい』と言われました。バレーボールはチームスポーツ、夢は一人では叶えられない。最初、本人は嫌がりましたけど、『13番目の選手として連れていきたい』と説得して、ロンドンに来てもらいました」