高校全国3位の秀才ジャンパーは大学院進学へ 靭帯2本断裂し、筑波大・柾木拓が応援席最前列で知ったこと
応援団長として「集団でやっている意味を再確認」
10月に手術し、リハビリの毎日。それでも「やれることをやるだけ」と心が折れそうになったことはなかった。
もともと研究熱心な性格。自身の怪我は特殊なケースで、通常のリハビリでは不十分だった。「画像検査のデータや皮膚機能、筋力などパフォーマンスに関わるデータを取ってきた」とデータをまとめて変化を研究。論文を出すことも視野に入れている。
大学最後の関東インカレ。軽く走れる程度は回復したが、跳躍できるまでには至っていない。「今年の関東インカレは暇だな」と思っていた時、入学以来、苦楽を共にしてきた二見優輝主将、堀内律子副将(ともに4年)から託されたのが応援団長だった。
「ずっと自分は出る側だったのでチームでやっている意識は少なかった」。応援席最前列が陸上への考えも変えてくれた。
「集団でやっている意味を再認識できた。自分では考えの及ばないようなことを考えている人がたくさんいる。技術や体力的なアドバイスもそうだけど、モチベーションを保つ上でもいろいろな考えに触れることは有効だと思った」
怪我をしたからこそ見えたもの。ガラガラに声を嗄らした21歳は、新たな価値観を知った。
卒業後は大学院に進学し、博士課程を履修する予定。「競技と研究を並行しながら『どうやったら人は高く遠くに跳べるのか』を考え続けたい。競技では自己ベストを更新すれば、また日本のトップで戦えると思う。競技と研究の両方でトップを目指したい」
試練を乗り越えた秀才ジャンパーの可能性は無限に広がっている。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)