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WBCの熱狂の裏で中学軟式野球に迫る危機 10年で部員数が半減、少子化だけではない要因

「川口市野球人口増加プロジェクト」を推進する川口市立芝東中学軟式野球部監督の武田尚大さん【写真:河野正】
「川口市野球人口増加プロジェクト」を推進する川口市立芝東中学軟式野球部監督の武田尚大さん【写真:河野正】

15年後に軟式野球の加盟生徒数が5万人に落ち込む推算も

 10年前の2012年を見ると、加盟校数が8886校で加盟生徒数も26万1527人。ともに全競技の中で最も多く、合同部活動実施チーム数にしてもわずか122だ。10年のうちに生徒数が半減し、単独ではチームを編成できなくなった。

 軟式野球の加盟生徒数は、2009年の30万7053人をピークに下降線を辿り、18年には16万6800人に激減。スポーツ庁が19年に野村総合研究所に委託した部活動人口推計調査では、28年に約10万人、38年には約5万人、48年になるとおよそ2万人まで落ち込む推算だ。

 少子化による運動部員数の減少は多くの競技に共通するが、軟式野球はほかにも要因があるのだろうか。

「野球はかつて、男の子なら誰でも親しんだ庶民のスポーツだったのに、今はものすごくお金のかかるセレブのスポーツになっています。家計への負担が大きいため、野球少年の多くが途中でやめてしまうような状況なんです」

 東京大学出身の3人目のプロ野球選手としてロッテに入団。現在、桜美林大学健康福祉学群で教鞭を執る小林至教授は、人気低迷の原因の1つに敷居の高さを挙げた。

 越谷市立大相模中学は昨秋、軟式野球の埼玉県新人大会を制した強豪だ。顧問の長瀬翼さんも「初期費用の道具代が高く、野球は金持ちのスポーツという印象が強くなったと思います」と小林教授と同じ見解を示しながら、「手軽にできるバドミントンや卓球の部員が増えたように、選択肢が広がったことも野球人口減少の要因ではないか」と分析する。

 中学生の軟式野球チーム、川口クラブのゼネラルマネジャー兼コーチで、埼玉県川口市立芝東中学軟式野球部監督の武田尚大さんは「子供たちのやりたいスポーツが多様化したこともありますが、公園でのキャッチボールが禁止されるなど、野球と触れ合う場所も機会も少なくなったことが大きい」と説明した。

 埼玉県新人大会には32チームが出場し、うち6つが合同チームだった。3校で編成したチームも半分あり、「本庄東・本庄南・上里北」チームは隣接する本庄市と児玉郡上里町の連合体。県内で最も人口の多いさいたま市でも単独では出場できない学校があり、大谷中と大砂土中は合同チームを結成して出場している。

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