日本トップのラガーマンが高校生に伝えたかったこと「チーム愛とは横にいる人への愛」
ハードな練習の中に隠されたチームプレーの本質
動きやスキルを確認するドリルと、2チームに分かれて行う実戦形式のゲームを交互に繰り返しながら、合間にチームトークを挟んで修正ポイントを話し合う。チームトークの時間は試合中のウォーターブレイクを意識した30秒間。限られた時間でいかに有効な意見交換ができるかがポイントとなる。その後は全員で一つの輪になり、「キャリアを焦りすぎている」「声掛けやノミネートをしっかりする」などチームミーティングで出た意見を発表。この時、天野が何度も強調したのが「コミュニケーションの大切さ」だ。
いくら優れた戦術やスキルを持っていても、チーム内でのコミュニケーションが図れていなければ何の意味もなさない。「みんなの顔には口が一つで耳が二つある。これは伝えることの2倍、聞くことが大事だということ。目も二つあるのだから、冷静に周りの状況を見ること。それがいいコミュニケーションを生み、いいラグビーに繋がっていく」という天野の呼びかけに、部員たちも応えようと懸命に動いた。
続いて行われたオフロードパスの練習でも、キーポイントとして挙げられたのはコミュニケーションだ。天野は体勢を崩しながらボールを繋ぐオフロードパスの極意を伝授。むやみにボールを投げるのではなく、「サポートに入る選手と目があったらボールを渡すこと」を大原則とし、アイコンタクトができなかった場合はパスせずに、ラックなどに持ち込むようアドバイスした。
ウォーターブレイクを挟みながらも、息の上がる強度の高い練習を続ける部員たちに変化が見られたのは、練習開始から1時間が過ぎた頃だ。チームトークと全体発表を繰り返す時に、部員たちは隣の人の腰に手を当てながら円陣を組むようになった。天野の助言を受けたものの、円陣の中ではさらに活発な意見交換が生まれ、チームの一体感はグンと増した。