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「遠征費の安さ」に親も驚き 異端の高校が挑戦、“部活内リーグ”が生む2つの利点とは

目指すのは「全員がギラギラしている部活動」

 さらに淡路プレミアリーグは、2つの大きな利点を生み出した。上船総監督が語る。

「月曜日に試合を開催できるのは通信制ならではのメリットです。土日は多忙なプロや大学のスカウトの方たちも、月曜日ならウチの試合に来てくれます。実際にリーグ戦では、今までトップチームに入っていない選手も声をかけて頂いていました。一方で日本では監督を通さないと選手たちに話しかけることもできないチームが多いのですが、ウチはすべてオープンなので自由に選手たちと接することが可能です」

 相生学院高校サッカー部では、各自の進路は自分で決めるのが原則だ。だからスカウトに声をかけられ、疑問があれば自分で質問を投げかけることもできる。

「コミュニケーション能力や人間力の向上にも繋がると思います。相生学院では本人の希望がない限り、スタッフが進路の相談に乗ることもありません。『監督に言われたから、この大学へ来ました』などということはないようにしたいと考えています」

 こうして自前のリーグ戦を用意すれば、他の強豪高校に比べても圧倒的に遠征費が安くなる。活動費が嵩みがちなサッカー少年を持つ親御さんたちには有難い話だ。

「来年以降は、ほとんど遠征の必要がなくなるはずです。サッカー少年の兄弟を持ち、兄が強豪高校へ進んだ親御さんが、ウチの遠征費を聞いて安くて驚かれていました」

 今、上船総監督が目指すのは「全員がギラギラしているリーグ戦であり部活動」だ。ただし、現構想が終着点だとも考えていない。

「僕は常々入学生の親御さんたちに、こう話しています。『ウチの活動で、現在確定していることはほとんどありません。選手を育てるための最適解を求めていく姿勢は不変ですが、その手段は世界の潮流に即して変化していきます』と。概して日本人は変化を嫌います。しかし本来、世界の流れを考えれば、変化しないほうが大きなリスクなんです。だから『想像を超えた変化が起こらなければ、逆にたいしたことはないとお考え下さい』と伝えています」

 1期生からJリーガーが2人誕生して、チームも兵庫県決勝まで進出した。だが相生学院サッカー部が見据えるのは、もっと大きな日本サッカー界の変化を促す改革なのだという。

【第1回】少数精鋭でも“出番の少ない選手”は生まれる 異色の高校が大所帯の部活を目指す理由

【第2回】部活内で“ハイレベルな競争”を実現 異色の高校が創設した「淡路プレミアリーグ」とは

【第3回】高校サッカーの異端児が挑む「部活内リーグ」 理想は18チームでの競争、その狙いとは

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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