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人生初の主将が日本代表「悩んで苦しんだ」 バレー荒木絵里香が高校生に打ち明けた想い

質問コーナーでは「声かけ」のやり方を生徒たちへ伝えた【写真:荒川祐史】
質問コーナーでは「声かけ」のやり方を生徒たちへ伝えた【写真:荒川祐史】

ピンチの時に大事なことは「目を合わせた声かけ」

 コンディション調整の大切さを説いたこともあり、荒木さんは授業中に「きちんと水分補給をするのを忘れないで」と生徒たちにポカリスエットによる給水を勧めながら講義。「コロナ禍の環境に対する悩み」というテーマに話が変わると、東京五輪の時の日本代表チームの状況を語り出した。

「私たちも東京五輪の前に大会がなくなってしまい、試合ができなくなって、自分たちの力がどのくらいなのかと不安でした。でもそれはみんな同じ条件。そういうことをしっかり受け入れて、今何ができるのかを考えることにエネルギーを注いでほしい」

 その後の質問コーナーでは「苦しくなった時はどう乗り越えたらいいのか」という悩みを打ち明けられた荒木さん。それに対し「スポーツに限らず勉強も同じだと思う。自分がキツイ時は仲間もきついし、相手もキツイ。そこでちょっと頑張れば強くなれるし、チームの中でもいい役割を担える。もうダメだと思ったら『あと少し頑張ろう』と思うようにすると、また違う気持ちになれる」とアドバイスを送った。

 運動部の生徒にとって共通の悩みともいえるのが「チームの雰囲気が悪くなった時に、周囲にどんな声かけをしたらいいのか」というテーマ。この悩みに大きくうなずいた荒木さんは「声かけ」の具体的なやり方を“伝授”した。

「例えば、バレーボールでは連続失点というシーンはシニアにもあるし、日本代表でもそういう話をよくしていました。そういう時の声かけで大事なことは、まず目を合わせるということ。焦っていたり、ピンチになったりすると、みんな一人になってしまう。それが悪循環になる。状況が悪い時こそ自分から声をかけてほしい。その時は『どうしてこうなった』みたいなネガティブな声かけではなく、『こういう風にしよう』といった前向きな声かけを意識してやってみてほしいですね」

荒木さんが結婚、出産を経て復帰した日本代表で抱えていた悩みとは【写真:荒川祐史】
荒木さんが結婚、出産を経て復帰した日本代表で抱えていた悩みとは【写真:荒川祐史】

 銅メダルを獲得したロンドン五輪だけでなく、結婚、出産を経て復帰した後も日本代表に選出され、キャプテンの大役を任された。しかし、キャプテンの経験はそれまで一切なく、初のキャプテンが日本代表だった。それだけに最初は悩み続ける毎日を送っていたという。

「いきなりの大役で悩みましたし、苦しみました。私は先頭に立って引っ張っていくようなキャラではないので、チームの前を走るのではなく、真ん中でみんなの顔を見てエネルギーを出して、どんな時でも自分が一番熱く声を出してプレーしようと思ってやりました。一人でできることには限界がある。そういう時は仲間もいるので“巻き込み作戦”をやりました。『助けて』と言ったら助けてくれるし、それによってチームの輪が大きくなるという効果もありますから」

 授業の終盤には、生徒ではなく先生からも「バレーボールをやっていて嫌だなと思ったことはあったか」という質問が。これについて「バレーは好きでやっているから、嫌だと思ったことはない」ときっぱり。その中で「嫌なことがあったら『原点に帰る』ということをしていました。私はなぜバレーをやっているのか、どうしてうまくなりたいと思っているのかということを考えました」と初心に戻ることで自分の立ち位置を確認していたという。

 世界と互角に渡り合った荒木さんの口から出た金言の数々。暑い中で行われた特別授業でも生徒たちは耳を傾け、自分の心に刻み込んでいた。荒木さんは「しんどいこともあると思うけど、感謝の気持ちを忘れず、いろいろなことにトライしてほしいです」とエール。生徒たちの目が一層輝きを増した瞬間だった。

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