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「もがくことから逃げないで」 川口能活&那須大亮が高校生に届けた「エール」の意味

那須さんは高校生たちに「ちょっとでも、半歩でもいいから前に進もう」と訴えた【写真:編集部】
那須さんは高校生たちに「ちょっとでも、半歩でもいいから前に進もう」と訴えた【写真:編集部】

高校生の表情に充実感「川口さん、那須さんの言葉がこれからのサッカー生活に生きる」

 貴重な機会とあって、高校生からは2人に活発に質問が飛んだ。「川口さんは主将としてチームをどうまとめていましたか」「高校時代や現役時代、心の中で何を大切にして頑張ってきましたか」。日本を代表するGKである川口さんについては、GKを務めている男子部員から「GKをする上で一番大切なことは何ですか」「川口さんが今、日本で求めるGK像は何ですか」と質問があった。

「GKにとって大切なことは、相手の攻撃に対して『来い!』と。『来ないでくれ』じゃなく、『俺のところに来い!』と強い気持ちでいること。いくらコーチングしても、相手が上手ければシュート飛んでくる。そのシュートに対して、『来い!』と向かっていく強い気持ちが大事。GKはピッチ上で最後の砦でもあるわけから、選手全員を包んであげる包容力も大事かなと思っています」

 インターハイ中止については悲痛な声も上がった。沖縄の高校生は「県大会もあるかどうかわからない。ちょっと混乱している状況で、部活もいつ始められるかもわからない。何をすればいいかわからない」と率直に語った。川口さんは「自分がもし、同じ立場だったら、何をしたらいいかわからない。行き場がない気持ちは痛いほど感じた」と胸を痛め、高校生の胸中に寄り添った。

 那須さんは「皆さんに言いたいのは……」と切り出した。「インターハイを目標にしていた人もいるけど、きっとそれがみんなの最終目標じゃないと思う。人生のその先に目標があるなら、そのことを考えてほしい。その時に大切なことは、もがくことから逃げない。その代わり、ちょっとでも、半歩でもいいから前に進もうとする。もうダメだと思ってしまう前に」と訴えかけた。

 高校生から質問するだけでなく、川口さんも那須さんも積極的に会話を持ちかけた。濃密な1時間はあっという間に幕を閉じた。

 参加した沖縄の那覇高の2人が取材に応じ、崎原誠顕君(3年)は「コロナの状況をどう過ごすか、プラスに考えていけるようにするということを実践していきたいと思いました」と言えば、玉城陽向君(3年)も「川口さん、那須さんの話を聞いて、できることが少ない中でも心に響く言葉があったので、これからのサッカー生活に生きると思いました」と語り、表情に充実感が滲んだ。

 一方で“先生”の2人も高校生に思いを重ねた。川口さんは「彼らの思いを聞いて、この苦しい状況からなんとか立ち直って新しい目標を立てて、一歩を踏み出してほしい気持ちに強くなった」と胸中を思いやり、那須さんも「生の高校生の思いを聞けて、つらい気持ちを感じた。でも今日、僕らが言ったことがすべてではないので、それぞれが考えるヒントになれば」と背中を押した。

 今年でサッカーをやめる高校生も多くいる。その現実について、那須さんは「感じている感情を無駄にしちゃいけない。だけど『つらい、悲しい』だけを残してほしくない。すぐには無理でも、少しでも気持ちを自分で高めること。それが次への目標につながってくる。本人だけではどうしようもない部分もあるので、周りの人が助けてあげてほしい」と大人のサポートも呼びかけた。

 そして、川口さんも続いた。それは「サッカー元日本代表」ではなく、一人のサッカー人として思いを込めたメッセージだった。

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