「魂で話さないと意味がない」 村田諒太が台本を見ず、高校生に届けた「エール」
村田が敢えて台本を開かず参加した理由、届けたかった「魂」の言葉
あっという間に過ぎて行った1時間の“夢授業”。最後に、村田は参加した40人にエールを送った。
「僕自身も北京五輪を逃し、やさぐれていた時期がある。でもそんなことがあったから、ロンドン五輪の金メダルもあったと思うし、高校6冠ができなかったから、その後のハングリーさがあったと思うし。結局、一つの出来事は自分自身でいくらでも捉えようはあるということ。俺は運がないから、こんな競技やっていてもしょうがない、人生なんか面白くないと思うのは自分の捉え方。
物事というのは一つの事実じゃなく、それをどう捉えるかという個人の判断にすべて委ねられている。皆さんには、ぜひこれからもいい判断をしていってもらいたい。自分にとってどう捉えるかが大事になるから。自分の成長になる、いい捉え方をしてこれからも進んで行ってほしい。もし、後楽園あたりで会ったら声をかけてもらえたらいいな。お互い、頑張っていきましょう!」
締めくくりに、オンライン上で一緒にファイティングポーズを取り、“集合写真”を撮影した村田。画面に並んだ笑顔に、充実したひと時が表れていた。参加者からは「僕も近い目標がなくなったけど、次のステージに切り替えて練習できる」「目標を違うところに置いて、モチベーションを保ちたい」といった感想が上がり、授業の最後に代表して一人の男子部員が感謝を述べた。
「夢の選手である村田選手に自分たちの意見を聞いてもらい、生で答えてくださったのはすごく自分の財産になると思います。インターハイはなくなってしまいましたが、その次の目標をしっかりと定めて、僕も村田選手のような応援される選手になりたい」
“与える”立場だった村田にとっても“与えられる”ものがあった。授業後に応じた取材で「個人的には、この期間をどう捉えるかを再認識する上でいい機会だったと思ったし、ありがたい機会だった。考えはあっても、アウトプットの機会がない。同じように先が見えない状況で若い子たちと話をしている中で、僕自身が教えられているようだった」と刺激を受けたことを明かした。
一方で、“声なき声”を想像することも忘れなかった。「学生のリアルな悩みを聞いたけど、こういう場に参加してくれる子たちは何かを得ようというポジティブさがあるので、心配はしていなかった」としながら「その裏で、こういう場に参加せず、今回の出来事をものすごくネガティブに捉えている子の方が実は心配に感じている」と、より多くの高校生が救われることを望んだ。
参加した40人のみならず、全国生配信されたインターハイ応援サイト「インハイ.tv」でも多くの高校生が視聴した授業。今回、意図をもって行ったことがあるという。真剣勝負の世界に生きる、村田らしい思いだった。
「敢えて台本を開かず、どんな質問が来ているかは見ないで、今、参加してくれている子たちを正面から受け止めた。僕が思うことを魂で話さないと、意味がないと思ったから。だから、自分が彼ら彼女らに伝えたいことを大事にしてやらせてもらいました」
前を向けば、こんな風に本気でぶつかってくれるアスリートがいる。「やってきたことは無駄じゃない」「この経験を将来良かったと言えるように」というメッセージは、どこかの大人がもう言っていたかもしれない。
しかし、憧れの人が向き合い、本音をさらけ出して伝えてくれるから、意味がある。そんな機会を提供した「オンラインエール授業」はさらに続いていく。画面上でつながるアスリートと高校生の特別な夏が始まった。
■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。今後は元バレーボール・大山加奈さん、元サッカー女子日本代表監督・佐々木則夫さん、バドミントン・福島由紀、廣田彩花、ソフトボール・山田恵里、ハンドボール・宮崎大輔、元テニス杉山愛さん、元体操・塚原直也さんらの登場が決まっている。授業は「インハイ.tv」で全国生配信される。
授業は「インハイ.tv」(https://sportsbull.jp/category/inhightv/)で全国生配信される。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)