桐生祥秀はなぜ「くすぶり」を打破できた? 専門家が見た9秒台の「2つの理由」
「自分の走り」が鍵に…日本選手権では惨敗「今回は心理的なプレッシャーなかった」
「この試合に向けて練習があまりしっかりできず、左足に違和感も残っていた。ベストではない状態で、できる限りのことをやればいいと心理的なプレッシャーがなく、『自分の走りをしよう』というマインドで臨めたのではないかと思います」
桐生にとって、この「自分の走り」こそが大きな鍵になっていた。
「日本選手権では世界選手権の権利を得るため、『絶対に3位以内に入らないといけない』という心理的なプレッシャーがかかっていた。今回の走りも技術的にこれまで出した10秒0台の走りと比べても抜群に良かったわけじゃない。ただ、それができずに負けた日本選手権と比較しても、普段通りの走りができたということがポイントになったと思います」
その影響は、技術的にも好影響を及ぼしていたという。
「スタートもプレッシャーがかかると、後方にキックしすぎて踏み外すような動作が起こりやすい。それでスタートで置かれて中盤で力んで後半の減速につながる。しかし、今回に限ってはスタートもうまくいって、後半まで上手に走ることができていました」
桐生の「自分の走り」を後押しした二つ目が“条件”だ。
この日、1.8メートルの追い風が吹いていた。一般的にはタイムを縮める上で有利に働くことは想像できるが、桐生にとっては追い風が通常の選手以上に味方しやすいという。