「日本人の選手はすごく綺麗です」 世界一と評された中野友加里のドーナツスピン論
スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る「THE ANSWER」の連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。フィギュアスケートの中野友加里さんがスペシャリストの一人を務め、自身のキャリア、フィギュアスケート界などの話題を定期連載で発信する。今回のテーマは「フィギュアスケートとスピン」後編。
「THE ANSWER スペシャリスト論」フィギュアスケート・中野友加里
スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、競技の第一線を知るからこその独自の視点でスポーツにまつわるさまざまなテーマで語る「THE ANSWER」の連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。フィギュアスケートの中野友加里さんがスペシャリストの一人を務め、自身のキャリア、フィギュアスケート界などの話題を定期連載で発信する。今回のテーマは「フィギュアスケートとスピン」後編。
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フィギュアスケートの華の一つである技術「スピン」。現役時代は「世界一美しい」と称されたドーナツスピンを武器に、数々の国際舞台で活躍した中野さんにスピンの奥深さを聞く。後編は、その「ドーナツスピン」について。リレハンメル五輪金メダル、オクサナ・バイウル(ウクライナ)を参考に習得した中野さん。なかなか聞くことができない極意を、元トップ選手ならではの視点で掘り下げた。(聞き手=辛 仁夏)
◇ ◇ ◇
――ドーナツスピンが代名詞と言われていたことを現役時代どのように思っていたのか聞きたいです。
「スピンが得意だということに気づかされたのが、佐藤信夫コーチの下に移ってからです。先生が変わり、スピンもいつも通り適当に練習していたのですが、ある時に信夫先生から『あなたはスピンが得意なんだから、もっとそのスピンを練習して伸ばした方がいい』と言われました。最初はドーナツスピンではなく、基本的なアップライトスピンからのスタートだったのですが、まずアップライトスピンの基本姿勢を直され、『こうすると回転が速くなるよ』というのを、ものすごく事細かに先生が持っている知識を私に教えてくれました。実はスピンは服装も関係してきます。フード付きのものでは速く回れないので、そういうものも『全部脱いでしまった方が速く回れるよ』とか、本当に当たり前のことなんですけど(笑)。そういう風に教えてくれて、スピンの練習をし始めたのがきっかけです。
そこからはもう1日のうち、なるべく1~2割はスピンの練習に充てるようにしました。やるのは全種類です。そんなにジャンプみたいにすぐにポンポンと跳べるものではなく、長くやっていられるものでもありません。スピンは目も回り、やっていると気持ち悪くもなってくるので、休み休みに。(一度に)やれてもせいぜい30分もやれないんじゃないかなという感じ。その中でいかに効率良く練習するかに重点を置いて、いつもその30分と決めた中で、プログラムに組み込んだスピンを毎日やる。例えば、一つのスピンに対して3回ずつ練習すると決めてやっていたら、それが、のちのち速く回ることによってGOEで加点され、ジャンプで加点が取れなかった場合に補っていたということに気づかされました。
それを一番感じたのが、2005年のNHK杯。ジャンプはそんなに良くなかったのですが、スピンに助けられて優勝することができたので、そこで大きく目覚めたという感じ。そこから代名詞とも言っていただけるようになったので、本当に良かったと思います」
――スピンは誰かに教えてもらうより自分で真似て、やりながら習得するというものなのですね。
「そうですね。ただ、最初の基本的な部分に関してはコーチの方から、姿勢や入り方というプレパレーション(準備)の部分をしっかりと学んだ方がいいと私は思いました。私も信夫先生に基礎の土台をゼロから教えてもらったおかげで、速く回るコツを掴むことができたので。誰かに最初教えてもらい、そこからいろんなポジションをいろんな選手から吸収し、実践してみて、それがプログラムに組み込まれるようになるまで到達できればいいなという感じですかね」