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日本期待の陸上リレーを「バトン」で深掘り 80gを持って走ると実は好影響だった?

バトンを持つと走りの動作に与える影響とは

 そもそも、バトンを持つと走りの動作にどう影響を与えるのか。

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「バトンを持つと肘から先だけで振ったり、腕が横振りになったりすると違和感が出ます。自分の体(胸付近)の近くでコントロールしやすいところに収め、コンパクトに振るという動作につながる。そもそも、腕振りが体から遠くなると力が入りづらくなります。結果、バトンを持つことで矯正され、腕振りのタイミングが合いやすくなると考えられます。

 バトンに限らず、何かを持って走ることで動作が変わり、それがピッチやストライドに影響し、スピードにも影響が出るという可能性がある。なので、練習で日常的に右手だけ持って走ってみたり、両方に持って走ってみたり。ちょっと工夫を加えてみると、走りの感覚が変わることがあるので、子供たちもかけっこで取り入れてみてもいいと思います」(伊藤)

 国際大会で使われるバトンの重さは80グラム程度とされる。80グラムとはいえ、重さのあるものを持つことにデメリットはないのか。

「今、話したタイミングの現象は重さが影響しているとも考えられます。振り子をイメージしてもらえれば、分かりやすい。足の着地と腕振りの力を入れる瞬間はパチンと合わせたい。下半身は脚で地面を踏むところはコントロールしやすいのですが、上半身は腕振りのタイミングを掴めない人は多いもの。そこで重さがあるものを持つと、腕が下に来た瞬間、力を入れるタイミングが分かりやすくなることもあると思います」(伊藤)

 実は手に持って走ることで、むしろ好影響を及ぼすことがあるバトン。速さを競う裏に、深さがある。

■伊藤友広 / Tomohiro Itoh

 1982年生まれ、秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。高校時代に国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権日本代表で400メートル5位、1600メートルリレーはアンカーを務めて優勝。国体成年男子400メートル優勝。アテネ五輪では1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。

■秋本真吾 / Shingo Akimoto

 1982年生まれ、福島県出身。双葉高(福島)を経て、国際武道大―同大大学院。400メートルハードルで五輪強化指定選手に選出。200メートルハードルアジア最高記録(当時)を樹立。引退後はスプリントコーチとして全国でかけっこ教室を展開し、延べ7万人を指導。また、延べ500人以上のトップアスリートも指導し、これまでに内川聖一(ヤクルト)、槙野智章、宇賀神友弥(ともに浦和)、神野大地(プロ陸上選手)、阪神タイガース、INAC神戸、サッカーカンボジア代表など。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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