コロナ陽性で辞退した選手へ 野口みずきが贈る言葉「5日前に欠場した北京五輪のこと」
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は「THE ANSWER スペシャリスト」として陸上界の話題を定期連載している2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさん。連覇を狙った北京五輪は左太もも肉離れで本番5日前に出場辞退を発表した。今大会はコロナ感染で直前に辞退を余儀なくされる選手がいる中、どん底から前を向けたきっかけと「挑戦の意義」を説いた。(構成=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#56
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は「THE ANSWER スペシャリスト」として陸上界の話題を定期連載している2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさん。連覇を狙った北京五輪は左太もも肉離れで本番5日前に出場辞退を発表した。今大会はコロナ感染で直前に辞退を余儀なくされる選手がいる中、どん底から前を向けたきっかけと「挑戦の意義」を説いた。(構成=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
【注目】育成、その先へ 少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信する野球育成解決サイト『First-Pitch』はこちらから
◇ ◇ ◇
まず、私は直前の故障で出場できなくなった経験がありますが、コロナの影響で辞退せざるを得なかった選手とは状況が違うと思います。比べものにならないので、何と言ったらいいのかわからないというのが正直な想い。1年延期で全ての選手に不安があり、制限の中でトレーニングをしなければならない。誰も経験したことのない本当に難しいオリンピックだと感じます。
陽性で辞退した海外の男子選手が「もう仕方がない」とコメントされていた。本人は残念だと思いますが、気持ちをしっかりと整理して切り替えているような受け答え。普通の人からすればすごく悔しいでしょう。でも、トップレベルの選手ともなると、ある程度気持ちの整理をつけて冷静にメディア対応しているんだなと。素晴らしいスポーツ精神を持っていると思いました。
私は北京五輪直前に故障した。あの頃は本当にしんどい時期だったので、鮮明には覚えていません。ギリギリで痛み出してから3、4日間ほど走っていなかった。でも、諦めきれない。どうしても出たい気持ちがあった。本当はジョギングするのもきつかったけど、何とか出られるように無理やり練習をしてしまった。いま振り返れば、それが1、2年も引きずってしまった要因だったのかなと。でも、やっぱり簡単には諦められない。
欠場はギリギリで判断した。私は出たいけど、競技人生はその後も続いていく。監督、コーチが後への影響を心配してくれた。それで「もう諦めるしかない」と。監督が記者会見で発表するまで、私は何とか走ろうとしていたけど、会見後は無駄に動くことをやめた。会見の時点で気持ちは切り替わりました。本番をテレビで見る頃には「もう仕方ない」「今更どうしたってできない」って。
寮のトレーニングルームでバイクトレーニングをしていたので、会見は見ていません。陸上部の寮にマスコミの方々が集まるだろうということで、北海道に急遽移動。連覇がかかっていたので、ある程度は覚悟していた。北海道にいる時に後輩から「人の数がすごいことになっていました」とメールをもらいましたね。それだけ大きな期待があり、残念な思いにさせてしまって申し訳ないという気持ち。五輪はそれだけ影響力があるんだなと身にしみて感じました。